アナベラが連れて来られた城のような館は、
プランテーション(大農園)
を営む農園主の住まいだった。
産まれて初めて足を踏み入れたその館は、広い農園を含む
土地のほんの一部にすぎない。
アナベラは、農園の中の、館からさほど遠くない場所にある
労働者達のための家として建てられた共同住宅で産まれた。
--彼女の母はしかし、彼女を産み落とした後この世を去った・・
彼女の血縁は、当時、母ひとりだけだったので、さぞ淋しい思い
をしただろうと思われるかもしれないが、実際には生活に困る事も、
愛情の不足や淋しさを感じることもなく、他の子ども達と、何ら変わ
らぬ日常を送ることができていた。
--というのも、一緒に住む仲間たちが親代わりとなり、共に暮らす
同じような年ごろの子ども達も兄弟姉妹となってくれたからだ。
加えて、労働者達にとってそのような暮らし方は、当たり前のこと
でもあった。
アナベラが4歳を過ぎる頃になると、農園での仕事を手伝う時期と
なった。
ただ、幼い子どもにとっての労働とは、様々な雑用を手伝わ
されるといった程度のものではあった--

