勇気がなければできない役回りだった。
選ばれた剣士達に、果たして彼のような度胸があっただろうか・・?
寿三郎は、誰もがしり込みするようなそんな役割を、苦にしなかった。
むしろ、長発直々の命とはいえ、損な役割 地味な仕事、と過小評価
しており、いずれは 大仕事=剣を使える仕事 をさせてもらいたい
気持ちを相変わらず抱いていた。
一方、人の適性を見抜くことに長けていた長発は、常に冷静で、部下に
対しても、誰かを特別に(贔屓して)重んじるとか、重用に温度差を付け
ることを決してしなかった。
部下をフェアに扱うと同時に、ギブ アンド テイク --自分の駒
として動かすにあたり、得意な分野で最大限の能力を発揮してくれるこ
とを求めた。
そんなある日、感情を露わにすることのない長発が、やはり駒のひとつ
としてしか見ていなかったはずの寿三郎に、突如怒りをぶちまける、とい
う事件が勃発する。
彼が怒る姿を初めて見た寿三郎は無論の事、周囲もその猛りぶりに仰天
したその事件は、皆がいつもの仕事に取り掛かって間もない時だった・・
