池田長発指揮下にある実行部隊は、配下の本隊と名も知らぬ剣士たち・・・
彼らの仕事は、陽の目を見ない--見せてはいけないものがほとんどだった。
なので、実行前の情報収集は欠かせない作業だったが、それは危険と隣り合
わせであるため、用意周到に進める必要があった。
その危険な仕事を任された寿三郎について--本人にはそれほど危険なもの、
といった自覚も薄かったが--彼の度胸の良さの他にも、予想を上回る意外な
利点を、長発は発見することになる。
彼が情報を得るためターゲットの住まいに向かう時、故郷で剣術を身につけて
以来肌身離さず佩いていた刀を置いて出かけた。
彼は、武士ではない--
刀を持たない寿三郎が、町人の格好をすると、あたかも生まれながらの地元民
のごとく、人々の中に溶け込んでしまう・・
さらに彼は、故郷で下働きの少女に取り入って道場に入り込み、いつの間にか
弟子になっていたように、世渡り上手というか、コミュニケーション能力に長けて
いるところがあり、それを無意識に情報収集時に利用した。
ターゲットのボディガードや門番等、もしくは、その取り巻きにすら、平気で世間話
をしかけ、無理なく情報を引き出したのだ・・!
情報量の多さ、正確さ・・加えて足が速いので、長発の部隊が情報を得るスピード
もそれに比例した。
--これは、武力に勝るとも劣らない大きな武器となった・・・
寿三郎がこの仕事に携わるようになると、長発側の不首尾が激減しただけでなく、
情報を得てから実行に移すまでの時間が短縮されたことで、こちらの情報が漏れ
にくいという恩恵にも与ることができた。
--長発は、相当な家系の出身だったが、この仕事をするにあたり、身分に拘る
ということがなかった。
現代的というか合理的というか・・・能力や適性に応じて、
適材適所
に部下を配置する、といった考えを持つ人物だった・・
