長発の部隊は、斥候として先陣を切る寿三郎が得てきた情報を元に
作戦を練る。なので、彼の情報が命綱であり、部隊の命運もそこに
かかっていた。
その日、いつものように斥候として情報を集めてきた寿三郎--
間もなく仲間の剣士達に同行してターゲットの元に向かった。
普段なら、その後はいつも通り伝令として戦況を知らせに戻り、本隊
と共に再度援護に向かうか、もしくは首尾よく進めば援護は必要なく
なるため、伝令の仕事はカット、仲間と共に凱旋するという流れになる。
--が、その日は何故か、待っても待っても寿三郎が帰ってこない・・・
戦闘が長引くということは、危険な兆候に違いないのだから、彼が援護
を頼みに戻ってきても良さそうなのに・・彼の身に何か起きたのだろうか
--?
本隊の志士達がざわつき始めた頃、息も絶え絶えに戻ってきたのは
寿三郎ではなく、別の剣士だった。
聞けば、寿三郎の姿が見えない--行方知れずだというのだ。
不利な状況に追い込まれ、そのまま闘いを続ければ、命も危ないし、
本陣をも危険に晒すことになる・・それを防ぐためにも寿三郎の存在が
欠かせないというのに--
結局、ほとんどの者が手負いではあったが、幸いにも全員無事に帰って
きた。が、やはり寿三郎の姿はなかった。
探しに行きたくとも、すぐ現場に戻るのは危険すぎるため、しばらく様子を
見ることにした。
--夜も更け
姿を現したのは、きょとんとして緊張感のない顔をした寿三郎だった--
傷を負った様子もなく、まるで何事もなかったかのような態度でいる彼に
事情を問いただす長発。
寿三郎は悪びれるふうもなく口を開いた。
居眠りしていました--