キャシーの別荘に入ると、居間や数々の居室は、アンティークな家具や調度品に囲まれていた。
別荘には、ローラ以外にもうひとり、夏の間だけの住人がいた。
--20代と思われる青年で、広い邸宅の中では顔を合わすことも少ない上、まだ子どもの
ローラと比べて、はるかに大人に見える青年に対して、積極的に声をかけるという発想は無い。
彼は、整った顔立ちの物静かな青年で、いつも脇に本を抱えていた。
ローラには、この青年がいったいどこの誰なのか、さっぱり判らない--キャシーは知っている
ようだが、その話題が二人の間に上ることは無かった。
別荘には、この3人以外の住人は使用人のみ--騒がしいキャシーも、多忙な両親が彼女と
一緒に、この ロングアイランド で夏を過ごすこともなく、ローラが来なければ、淋しい
日々を、ひとりで暮らすことになっていた・・
そんな、思春期真っ盛りにありながら、親への不満と寂しさを胸に抱えた二人が、誰にも小言を
言われずに済むこの別荘で、反抗期の憂さを、バカ騒ぎで晴らすことになる。
--広い居間に置かれた大きなグランドピアノ--二人はそのピアノを掻き鳴らし、大声で歌い
始める--めちゃくちゃな演奏と馬鹿げた歌詞に、涙が出るほど大笑いしながら、ひとしきり騒
ぎ続けたのだった・・・

