まったく、通りすがりにすぎない半次郎という男を、考章は何故ここまでして救おうとしたのだろう・・
彼の行為は 『五常』(ごじょう)
仁 ・ 義 ・ 礼 ・ 智 ・ 信
の教えを体現したもののように思えてならない。
仁 人を思いやること。 博愛
義 利欲にとらわれず、なすべきことをすること。 正義
礼 「仁」を具体的な行動として、表したもの。
智 学問に励むこと、知識を重んじること。
信 友情に厚く、言明をたがえないこと、真実を告げること、約束を守ること、
中国,古代,孟子の中心思想。
孔子は人間の最上の徳として,もっぱら仁を説いた。孔子をつぐ孟子は,人は
生まれながら善なる性の端緒を備えもつと考え,また,君主が仁政を行って民
に恩沢をもたらすことこそ政治であると考えた。
仁義礼智の四徳から,博愛をいう仁と,正義をいう義とを並べて道徳の基本理
念とし,仁義を説くことによって,人が自己の人間性を完成させることを期待した。
日本でも,戦国時代の武将にとっては政治規範として,江戸時代の士道論に
おいては社会的秩序の規範として仁義がとらえられた。
彼は、正にこの教え通りに生きた人のようだ。
武士の家系に生まれ、そのような教えも、幼い頃から叩き込まれていたのかもしれない・・・
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少しづつ、自分の身の上を、考章に話し始めた半次郎ーー。
ーー飲みすぎた酒の影響はまだ残っていて、床から起き上がることはできないものの、それ
でも話すことによって、精神的には落ち着きを取り戻しつつあった。
考章は、栄養がつくものを見つけては、高価なものでも構わず手に入れ、彼に食べさせた。
ーー半次郎の方はといえば、生まれてこの方口にしたこともないような物を食べさせられ、逆に
腹を壊すようなこともあったが・・
しかし、彼の 見返りを求めない無償の行為 は、確かに半次郎に伝わっていった・・・
