人斬りの仕事から、すぐにでも足を洗いたいーーけれど、それはできない。
追い詰められた前世の男性は、終日街をさ迷った挙句、居酒屋で酔い潰れた・・・
若い男たちのリーダーである男性だけは、周囲の誰もが避ける怪しげなその人物に、何故か、
憐れみの気持ちを抱いた。
彼は、飲食の場を盛り上げ、仲間達を楽しい気分にさせることのできる性格であったため、
皆から好かれている。誰に対しても偏見なく、好き嫌いで接することもしないので、次々に
仲間は増え、慕われていた。
しかし彼が、不気味なその男性に対して
『君、こっちへ来て、一緒に飲まないか?』(こんな言葉遣いだったかどうかは不明(;^_^A)
そう声を掛けた時、仲間達は、さすがに彼のその性格だからと看過することはできなかった。
彼らは慌て、そんな事は止めろと口々に言い張る。
ーーが、彼は構わない。躊躇なく彼に近づくと、一緒に飲もうと言ったにも拘らず、そんなに
飲むと、身体に悪いーーと忠告している。
前世の男性は、焦点の定まらない視線を彼に向けると、その手を振り払い、よろよろと立ち上
がった。その瞬間、仲間達が一斉に二人を取り囲んだーー何故なら、男性の手が、剣の柄へと
伸びるのを見たからだったーー
彼らの顔に緊張が走る・・!
しかしリーダーは、彼らをやんわりと制した。すると直後、前世の男性は意識不明となり、その
場に倒れ込んでしまうーー
結局その日は、仲間達に強く促されて店を後にしたが、後ろ髪を引かれる思いであった。
ーー年の頃も同じ若者でありながら、大きな悩みを抱え、あのように痩せ細っている・・・
彼とはまるで正反対の人生を歩んでいるとしか思えないその男性を、何故か放っておくことが
できないのは、その性格の成せる業か、それとも・・?
