・・夜道に現れた、前世の男性の『亡霊』のような姿ーー
その時代、彼の人生で最も苦しかった瞬間ーーその暗い思いが、前世を視る私の前に
複製(コピー) され形作られたかのように、登場した・・
耐え難い程の辛さーーその気持ちが痛いほど伝わってくる出来事だった。
ほぼ 『棺おけに片足を突っ込んだ』 ような状態である前世の男性。
冷静に物事を考える余裕も失ったその頭をかすめるのは
『死んでも構わない・・』
もう、やぶれかぶれだった・・・
そんな中、彼の苦しみを和らげたのは、やはり 酒の力 ーーー
男性は、日が暮れると酒を求めて、とある居酒屋に足繁く通った。
常連客で賑わう店も、彼の周囲だけは誰も近寄らないーーー毎日ひとりで来ては酔いつぶれ、
意識を失うがりがりの男は、客達にとっても、お店の主にとっても薄気味悪かった。
その出で立ち、態度を見れば、よからぬ仕事に手を染めていることは明らかーー怖くて近寄る
ことすら躊躇われた・・・
そんな常連客のうち、毎日のように店を訪れるある団体があった。
年は、20代の前半から30代前半ぐらいまでの男たち数名。
前世の男性とは対照的に、賑やかで、時にはばか騒ぎもするーー
彼らも、他の客達と同じように、前世の男性を避け、離れて飲食しているーーまるで男性など
存在してさえもいないかのように、無視を決め込んで・・
ーーが、リーダー格と思われる男性だけが、彼に時折視線を送っていることを、誰も気づいて
いなかった・・・
