空の彼方に④ 惨禍 | 前世の記憶 ~Past Life Memories~

前世の記憶 ~Past Life Memories~

占い師や精神科医に頼ることなく、自力で前世を蘇らせる方法。

他 映画、音楽、スポーツ関連記事も書いています。


その日、少年は飼い犬を連れ、ひとり山を歩いていた。

振り返ると、屋敷の庭に生えている桃の木ーー子どもの頃から、その実をかじる

のが楽しみだったーーが見える。



しばらく勾配を登っていくと、見晴らしのよい頂上に辿りつくーーその時だった・・・


けたたましい鳴き声と共に、脱兎の如く駆け出す犬ーー

大声で名を呼んでも戻らないーー今来たばかりの道を、真っ直ぐ駆け下りていく。



ーー再び名を呼ぼうとして、少年は止めた・・それは、彼がある異変を感じたからだった。

・・不吉な予感は彼に、深くそれについて考える暇を与えなかったーー


地鳴りと共に揺れ始める足元ーー瞬間、脇に生えていた一本の細い木にしがみ

つき、すべり落ちないよう必死に自分の身を支えた。


ーー長い時間のように感じられた揺れが収まった時、我に返った少年の脳裏に浮か

んだのはただひとつーーそれは犬が向かった先ーー父と母の屋敷だった・・・!


無我夢中で山を駆け下りた彼が見たものはーー


重い重い、頑丈な造りの大きな屋根が、原型を留めたまま、無残に押し潰された屋敷

上に乗っている光景だった・・・