前世の男性が、何故、人斬りのような仕事に携わることになったのか・・?
それを知るためには、彼の人生をその時点から遡る必要があるーー
ーー奥さまから依頼された鑑定は、まるで磁力によって引き寄せられるかのごとく、
ご主人の前世へと、一方的に向かいつつあったーー
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視えてくるまで、2~3日を要していたものが、一度視え始めると、加速するように
一気に見えてくる。
ーー現れた映像は、とある武士の屋敷ーー人斬りなど、縁も所縁もない時代、前世
の男性の若き日の姿。
彼は、ある 下級藩士 (士分の下層に属する武士) の息子として生を受けた。
生家の周りは山や川、深い森のある自然豊かな土地である。
父は下級武士ではあったけれど、ひとり息子(10歳以上年の離れた妹?がいる)
を 深い愛情 をもって育てていた。
とりわけ父が目を細めたことは、少年が、幼い頃から 剣に秀でた才能 を持ち
合わせていたことだーー年を経るにつれ、益々腕は上がり、父は嬉しくて仕方がない。
剣術の稽古を見守る父の顔には笑顔が絶えず、また、息子である少年のほうも、父
の怒った顔など一度も見たことがない。
ーー誉められれば、ますます稽古に励み、父の喜ぶ顔を見ては、また専念するーー
15歳の彼は、めきめき腕を上げていった。
母も穏やかで慎ましやかな人物で、豊かではなくとも、両親の愛情を一身に受けて
育った少年時代は 人生で最も幸せに満ちた時代 だった。
ーーが、そんな彼の人生をーーまるで白い半紙に墨汁を一滴落としたような、ある出
来事が襲うーーそしてその染みは、あっという間に真っ白な半紙を漆黒に染めていく
のだった・・・

