今の感覚で見るからそうなのかーーその港は、それほど大きな港ではないように見えた。
出航しつつある船を見送っているのは、その母ーー。
息子は、敬礼したまま、次第に遠くなる母を見つめていた。
白い詰襟ーー季節は初夏から夏にかけてだろうか・・?眩しすぎる陽光も、季節のせい
かもしれない・・・
しかし母の心中は、あまりの悔しさ、腹立たしさに満ちていて、それは悲しみを凌駕してし
まった。
ーー何故、息子は故郷を離れる決意をしたのか・・!
兄弟の中で最も素直で、親の言い付けをよく守る子だった・・・それが今回ばかりは、反対
する両親ーー特に母の思いを振り切り、自分の意志を貫いたのだ。
何を言っても、頑として聞かないーー一番お母さん子だったはずなのに・・・
・・・どげんも、こげんも・・・
愚痴しか出なかった・・

