一体彼がどこから来たのか、誰も知らないーーー
それを尋ねても、寡黙な彼は決して口を割らない・・・
一族の中には、それを良く思わない人間もいた。
が、そんな彼を受け入れたリーダーが目を光らせている。
リーダーを畏怖する人々は、それ以上青年の過去に踏み込むことはできなかった。
寡黙だけれど、仕事はきっちりこなす。
細身だけれど、無駄の無い筋肉のついた身体ーー人一倍力も強く、動きも俊敏だ。
ーーそんな青年に、偏見の無い好意を持ったのは、若くて年頃の娘達だった。
どこの馬の骨かわからないーーと陰で揶揄されるデメリットは、彼女達にとっては、ミステ
リアスな存在と映り、好奇心を掻き立てられ、逆に魅力となるーー
均整がとれたアスリートのような美しい体型も、大いに魅力的に映った。
が、彼はいつもつれないーーといって、はっきりと拒絶もされないため、期待を抱く。
いったい、彼女達の気持ちを判っているのかいないのかーー娘達は気を揉んだ。
彼は・・当然、判っていた。
ただーー彼女達の最終目標が 『結婚』 だと判りきっている以上、彼にその気はなかった。
この青年はーータイトルにもしたように
ミステリアスな
ところがあった。
狼や熊と会話する青年には、積極的に家族を持とう とする意志が無かったのだ・・
