若く、健康な男性にとって、誰に頼ることもないひとりきりの生活は、それほど不自由な
ものではなかった。
食糧を調達するための漁も、子どもの頃から慣れ親しんだ仕事である。
ーーーそして、彼には思いのほか 『孤独』 を辛いと感じない利点さえあった。
それは、大自然の只中での生活に起因しているーー
ある晩、目の前に広がる大きな黒い森の向こうに、狼の遠吠えが響いた。
青年は耳を研ぎ澄まし、遠吠えで答えると、間もなく狼もそれに呼応した・・
青年は、どういうわけか、彼らと交信する不思議な術を手に入れていた。
また別の日には、彼が漁を始めようとしていた矢先、川辺にやってきた大きな熊と遭遇した。
しかし彼は、怯えたり、逆に威嚇したりなど一切しないーーどころか、熊が何を欲している
のか、まるで会話でもしているかのように判ってしまうため、川魚を漁る熊が、お腹を満たす
まで邪魔しないよう、岩場の陰で静かに見守ったりしているーー
かなり近いところで見ているので、熊も気づいているはずなのだが、熊のほうでも、青年の
意志が判ってでもいるかのように、牙を剥いたりしないのだ。
ーー彼は、大自然の中で、人間以外の生き物達と通じ合うことに喜びを感じ、満足感を得る

