謝りたい人がいます。⑧ 哀しみの花飾り | 前世の記憶 ~Past Life Memories~

前世の記憶 ~Past Life Memories~

占い師や精神科医に頼ることなく、自力で前世を蘇らせる方法。

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ジャムカが、足繁くツェツェクの住居に通っていた頃を思えば、今回の帰還は

ツェツェクにとって、絶望的とも思えるほどの日数を重ねていた。


母が、娘を想うあまり、つい激しい口調になったのも、もしこのまま、あの兵士が

戻らなかったらーー純粋無垢な彼女の心にどんな打撃を与えるかしれない・・

そう思うと、いてもたってもいられなかったからだ。ーー




恋人の帰還は、いつもと違っていた。

以前なら、真っ直ぐツェツェクのゲルへと戻ってきていたのに、今回は、一度ゲルを

通り過ぎている。


ジャムカの帰還を知った少女は、彼の元へと駆け寄った。

しかし彼は、差し出された花飾りには目も呉れず、道を急ぐから泊まれないと告げる。


青年は、帰路を急いでいたーーー



前世の記憶 ~Past Life Memories~

ショックの色ががありありと窺えるツェツェクに哀れみを抱き、『また近いうちに』  と

つけ加えたが、彼女の瞳には涙が浮かぶーー


逸る心を抑えられないジャムカは、しかし手綱に手をかけた。

慌てて花飾りを持たせようとする少女ーーーが、次の瞬間、それは二人の手からすべり

落ちた・・


地面に散らばる花を拾おうとするツェツェクーーが、ジャムカは、それを待つことなく騎乗、
後塵を残して、あっという間に遠ざかってしまうーーー 

その場に呆然と立ち尽くす少女は、蹄に踏みにじられた花々を、それ以上拾おうとは

しなかった・・・


前世の記憶 ~Past Life Memories~