『この子は・・!
いつまでも、あの男が帰ってくるとでも思っているのかい?!』
結婚話が持ち上がっているにも拘らず、決して受け入れようとしないツェツェクに
業を煮やした母親が、吐き捨てる。
ーー母には、娘の未来がどのようなものになるか、よく判っていた。
ーーー相手は軍人ーーいつか、必ず捨てられる・・
しかし、一途にジャムカを慕うツェツェクには、彼以外の男性を愛することーー
ましてや、結婚など考えられなかった。
母に言い返す言葉も知らない少女は、そんな時、ひとり、夜空を見上げるーー
満天の星の下、悲しみに耐えることしかできなかった・・・
月日が経ち、20歳代という若さにも拘らず、異例の出世を遂げたジャムカは、
高位の軍人しか着ることを許されない長いマントを羽織って、ゲルの前に現れた。
彼に捧げるため作った花飾りを手に飛び出した少女を待っていたのは、しかし
厳しい現実だった・・
