February 12, 2013
By: Jackie Wong
先週末行われた四大陸選手権2013ーー
男子シングルは、サプライズに次ぐサプライズだった。しかもそのサプライズが嬉しい
サプライズだったか、悔しいサプライズだったのかは、あなたが応援していた選手によって
違ってくる。
ケヴィン・レイノルズの国際大会における初優勝は、高橋大輔の崩壊を目の当たりにした
日本のファンが受けたショックにも匹敵する、逆の意味での大きな『ショック』だった
ことだろうーー
レイノルズの大金星
突如、馴染みのない選手が、世界フィギュアの優勝候補に名乗りを挙げた。
彼の登場を誰が予想し得ただろう?
レイノルズーーこのカナダ選手権の銀メダリストは、世界フィギュアで10位以内にさえ
入ったことがない、シニアレベルでのGPシリーズでは一度も優勝したことがない、過去に
出場した全ての国際大会で獲得できたメダルはただひとつ・・・そのメダルこそ、奇しくも
2010年の四大陸選手権での銅メダルだったが・・
ーーまあ正直言ってこの大会は、目前に迫ったバンクーバーオリンピックの準備に追われる
当時のトップスケーター達の眼中に無かった大会ではある・・
ともかく、誰もが、来る世界選手権における優勝候補最有力であろうと認める、2人の
スケーターを倒したというレイノルズの大金星は、革新的なことだと言える。
高橋と羽生の2人共が、本調子でなかったとはいえ、レイノルズが示したいくつかの
利点は、彼を世界フィギュアでの対等な挑戦者と見なすことが、現実味を帯びた話に
なってきたことを証明するものである。
その理由を次にいくつか挙げてみた。
テクニカル分野における実力
ショートプログラムに2本のクワドを入れている唯一の選手は、レイノルズだ。
彼と、ヨーロッパ・チャンピオンになったばかりのハビエル・フェルナンデスだけが、フリーで
常に3本のクワドを入れている。つまり、彼らの兵器は、2種類のクワドだけではない、
『three-quad-free-skate(3クワドフリースケート)』
に、果敢に挑戦し続けている世界でも類を見ないスケーター達なのだーー
なので、このテクニカル分野でのアドバンテージは、彼の演技構成要素での不利を補うこと
ができる。
ついに証明された成功
レイノルズがフリーで3本のクワドを跳ぶというのは、今に始まったことではない。
昨年など、3種類のクワドをフリーで試みているーー但しループに関しては、実現可能だとは
思えない・・
彼のクワドはずっと、アンダーローテーションと判定され続けてきた。けれど、今大会と先月の
カナダ選手権では、成功率がぐんと上がった。
世界フィギュアで5本のクワドを全てクリーンに決めることができたら、とんでもないことになる
だろう!
そして、スコアも後押しする
フリーのスコアが、170点を越えた選手は、世界でも一握りしかいない。
四大陸で彼が叩き出したスコアで、そんな選手達の仲間入りも果たしたーー。
演技構成要素は、今回、とても上達したと言える。確か以前、つなぎの欠如に関して
いろいろ言われていたようだが、その頃に比べれば雲泥の差がある。
それはスコアにちゃんと反映されているので、間違いない。
大袈裟でなく、彼が世界フィギュアで、一発逆転できる可能性を秘めていることは明らかだ。
それにしても、1週間前なら、彼をダークホースと呼ぶ人すら無かったであろうことを考えれば、
ひとつの競技会が与える影響のなんと大きいことかーー!
日本選手に起きた異常事態?
日本人選手の表彰台独占、までの予想はしていなかった、がーー
高橋はGPファイナルで優勝、羽生はその彼を破って全日本で優勝し、無良が小塚や織田と
いったビッグネームを抑えて、サプライズの銅メダルを手繰り寄せた。
この3人全員が、今シーズンのGPシリーズで各々等しく優勝を飾ったーーということは、彼らが
絶対的な強者であることに、疑いは無かったはずだ。
ーー振り返れば、ショートで、すでにその前兆は表れていたのかもしれないーー
高橋のクワドトゥは決まらず、失敗したことのない3アクセルで転倒、4位となる。
今シーズンの男子ショートを支配してきた羽生は、3ルッツがシングルになった事以上に、
彼のトレードマークともいえるエネルギーに満ちた勢いが、全体的に感じられなかった。
フリーで高橋は、ほとんどのジャンプを失敗、7位まで順位を下げた。過去、そこまで順位を
下げたのは、8位で終えた2006年のトリノオリンピックまで遡らなければならない。
羽生は、彼ほどではなかったものの、スケーティングは凡庸なものに映った。
クワドを1本、5つの3回転を成功させたものの、演技構成はレイノルズを下回り、2位に沈んだ。
これらの事実が、世界フィギュアにどのような影響を与えるのか?私には、読めないーー
シーズン序盤に見たのは、2人の不可解な演技。
ーースケートアメリカにおける羽生のフリーや、高橋の中国杯ーー
その後盛り返したパフォーマンスの数々は、彼らの人生最高とも言える見事なもの・・
それでも彼らが、ワールドの優勝候補であることに変わりは無いーーとはいえ、男子シングルは
リスキーなプログラム満載の部門であるとつくづく感じる。
(後略)
