下宿は、とある聖職者(牧師さん)の家だった。
女主人は牧師の母で、孫の少女と3人で暮らしていた。
瞳のくりくりした年配のランドレディは、日本人の男性に人懐っこい笑顔を向けた。
小柄な女主人は、男性を見上げる形となる。
にこにこしながら差し出した両手には、一枚の手編みのセーターが乗っていた。
ーーー多大な負担をかけている故郷を気遣うあまり、冬が来ようとしているにも拘らず、
男性が、着の身着のままで乗り切ろうとしていたことを、女主人は察していた・・
はっきりした感情として伝わってきたわけではないが、男性が、女主人の温かい心遣いを
受け入れ、心を動かされたことは間違いないようだった。
そしてそれは、男性が、下宿先の家族に対して心を開くきっかけとなり、同時に
美しい孫娘に心を動かされていくきっかけともなっていくのだった・・

