視点を、帝大生らしき学生に変えてみると・・
下駄を履いた足元が見えるーー
顔を上げると視線の先に、友だちと並んでこちらを見ている2人の女子学生の姿があった。
そのうちの一人が、以前自分が手を貸して起こしてあげた少女だということにも気づいていた。
彼女が、よく自分の守備範囲?の中に入っていること、その理由も感覚で解っている。
がーー
心は動かされないーーそしてそれには理由があった。
ひとつは、少女が明らかに裕福な家庭のお嬢さんだということが、身なりを見れば一目瞭然だったことーーー
下駄の鼻緒も、布キレで結んでいるくらいの貧しい家庭に生まれ育った自分には、そんな少女との恋は、非現実的にしか思えなかったーー
まして、現状の自分は、恋だのデートだの、そんなことに浮かれていられる身分じゃないーー
勉強第一。
いつも手にしているノートには、講義の内容がびっしりと書き込まれている。
それを繰り返し読んでは、勉学に励んでいた・・・
ーーそんなわけで、彼は少女に、ほとんど心を動かされていなかった。
動かそうとしなかった、と言うのが正しいかもしれないがーー
現実は少女漫画の世界のようには進まないーー
少女の恋は片思いに終始したわけだが、それなりに、妄想を膨らませていたので、楽しくて仕方がなかったわけではある・・・
