オオカミは、潅木の間に立ち止まったまま、こちらをじっと見ている。
とてつもない恐怖に襲われながら、対峙する前世の男性は銃を構えたーー
しかしびくりとも身体を動かさず、射手をじっと見詰めたまま動こうとしない・・・
男性は、引き金を引くことが出来ないーー
ーーー恐怖が一瞬にして 畏敬の念 へと変わっていたからだ・・・
男性が追っていたのは、日本オオカミ。
撃たなければならない使命(命令?)を負っている。
狩人である男性は、山中で生活し、野生動物の様々な生態を熟知していた。
日本オオカミが、た易く倒せる相手でないことも知っている。
周到に狩りの準備をし、オオカミを追ったーーー
ただ、男性は、他の動物たちと日本オオカミが、まるで異なることに気づいていた。
それは、同業者たちが理解しない感覚・・・
ーーー相対峙した瞬間、オオカミは、自らの運命を知っていた・・・

