猫のまーちゃんが逝って
4日経ったその日ーーー
仕事を終え、家に戻っても
主人も息子も不在だった。
ひとり、火が消えたような家の中
テレビ画面をぼんやりと見つめていた。
ーーーすると突如、信じられない音を聞いたーー
テレビのにぎやかな音に混じって
確かに聴こえる・・・・
ーーーにゃぁ、にやぁーーーー!
そしてもう一度ーーーにゃあーー
亡くなる2日前の鳴き声ではない
元気な時の元気な大きな鳴き声ーーー!
玄関の方から、はっきりと聞こえた・・・!
思わずそちらの方を振り向き
テレビの音を消すーーー
しーーーん・・
何も聞こえないーー
空耳なのか、何か別の音を聞き間違えたのかーー
耳を澄まし、テレビをつけたり消したり・・
何度もしてみたが、2度と聞こえることはなかった。
でも、確かに疑いもなくあれは、まーちゃんの鳴き声・・・
翌日の朝、化粧をしようと
化粧箱の中に手を伸ばし
アイシャドウのケースを掴んだ。
その指の先に、ケースとともにぶら下がっていたのは
乾燥した一本の草だったーーー
ーー生前、道端に生えている草が大好きだった。
帰り道、数本持ち帰ると
狂ったように欲しがって鳴く。
あまり食べると吐いたので
2~3本あげると、一気に食べた。
大好物だったのだ。
ーーこの箱を使い始めて、半年ぐらいになる。
何故今頃、化粧箱の中から出てきたのか。
草を最後にあげたのがいつのことなのか
覚えもないほど前だし、化粧箱に入るような場所で
食べさせた覚えもないーー
前夜の鳴き声といい、この草といい・・
鳴き声が聞こえた晩は、いくら可愛がっていた猫
とはいえ、少々怖いような気がしていた。
そこで、鳴き声のした辺りで
問いかけてみたーーー
すると
ーー何か心が温かくなるーーー
そんな感覚に包まれた・・
たぶん
そんなに落ち込まないでーー
僕はしあわせだったよ
おかあさん(私のこと)も
しあわせだったんだから
淋しがらなくていいんだよ・・・
そう言っているような気がした・・
棚の上には、まーちゃんの写真とともに
形見代わりのねずみのおもちゃ(大好きだった)
そして、乾燥した一本の草が並べてある。