江戸の隠密⑦ 松五郎の感性井戸からくみ上げた水が、たらいに張ってある。 暑い夏ーーー 幼い松五郎は、庭で水を浴びていた。 水面が、垣根に反射してきらきら揺れている。 それが、幼い松五郎の心を捉えるーー 癒やしてくれる・・・ 母が身をかがめ、優しく微笑んでいた・・・ しのつく雨ーーー 旅路で、地面に置いた笠をしとどに濡らす雨を 飽きずに眺めている。 ーー木枯らしが吹けば、舞い上がる木の葉に 陶然と見惚れているーーー 松五郎の感性は、自然に対して 大きな振幅を示すものだったようだ・・・