シェリーの町、ヘレス⑤ ~ボデガス・レイ・フェルナンド・デ・カスティージャ(後編)~ | ¡Viva ワイン!

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ワインを飲みながら、気になったことを書いていきたいと思います。

連日のワイナリー訪問記、私の飲み食いブログをご覧になりたい方、ごめんなさいね。もう少し続きます。


ナバソス、ペドロ・ヒメネス・エチソのソレラの次に見せていただいたのは…。


¡Viva ワイン! アンティケのソレラです。床に砂が撒かれてあるのがお分かりになるでしょうか?この砂はアルベロと呼ばれ、ヘレスにあるボデガにだけ撒かれてあるようです。ヘレスは海から離れているため、1年を通して温暖なアンダルシアであっても寒暖の差があります。砂に水を撒くことで気化熱を利用して気温を調節したり、湿度を調節したりしているのだそうです。


¡Viva ワイン!
こちらがアンティケ・シェリー。


¡Viva ワイン! 今年撮った写真が分かり辛かったので、前回載せた画像を再度載せます。


上にある樽には『OLOROSO 1/26』と書かれていて、下にある樽には『FINO 1/19』と書かれてあるのがお分かりになるでしょうか?


ハイメのボデガの所でソレラシステムの説明をした際に、一番下の樽からボトリングして減った分だけ下から2番の樽から補充すると書きましたが、こちらのボデガの場合は、一番下のシェリーと下から2番目のシェリーでは種類が異なるのでブレンドすることは出来ません。このように、常に一番下からボトリングするというのではなく、ボトリングする準備が出来ている樽の塊があると考えていただければと思います。


実はこの事より説明したかったのは、シェリーは大きく3つに分けられるというお話。

1.フィノ(マンサニージャ)…フロール(酵母)の下で空気に触れずに生物学的熟成をさせたシェリー。

2.オロロソ…ご説明します。

3.ペドロ・ヒメネス、モスカテル…収穫したブドウを一度天日干ししてから絞って発酵させる甘口シェリー。


まだご説明していなかったのが、このオロロソというタイプのシェリーです。ソレラシステムの説明で、一番上の樽にはその年に取れたブドウで作られた若いシェリーが補充されると書きましたが、この若いシェリー、何でも良い訳ではないんです。


シェリーは酒精強化というワインになるのですが(何故か日本では甘味果実酒というおかしな日本語で分類されてしまうため、シェリーは甘いものと勘違いされている方もいらっしゃると思います。酒税の関係なのですが、改めてほしいですよね。)、元を遡れば、15世紀&16世紀のスペイン大航海時代に船乗りたちが樽のまま船に積んだワインが悪くならないように(ビネガーになってしまいます)ブドウを原料とする蒸留酒(ブランディーのようなもの)を加えてアルコール度数を高くしたのが始まりです。


ソレラシステムの一番上の樽に補充される若いシェリー(ソブレタブラと言います)ですが、発酵が終わったアルコール度数が11度~12度の白ワインがあるとお考えください。この表面に薄くフロール(酵母)がついているのですが、この段階でカパタスと呼ばれるテイスターが最初の分類をします。香りがクリーンで色が淡く軽やかなワインはフィノ用に、香りがしっかりしていてボディーがあり色も濃いワインはオロロソ用になります。


フィノになるワインは蒸留酒を使って15度までアルコール度数を上げるのですが、ついているフロールは維持されてフィノとしての道を歩みます。


一方、香りがしっかりしてボディーがあり色が濃い目のワインは、蒸留酒で17度までアルコール度数を揚げます。アルコール度数が高いためフロールは生育出来なくなります。フロールがなくなるので直接空気(酸素)と接しながら熟成されることになるのですが、こちらを酸化熟成と呼んでいます。


フィノとオロロソの根本的な違い、お分かりになりましたでしょうか?


¡Viva ワイン! 自然光で撮ったので全体が暗いですが、本当に見事ですよね。


¡Viva ワイン! ちょっと興味深い樽があったのでご紹介。OLOROSO SECO VIEJISIMOとありますが、辛口のオロロソのとても古いもの、という意味です。3樽ありました。はっきりした樽の大きさを聞きそこなったのですが、明らかにソレラの樽とは異なる大樽です。まだ一度もボトリングしたことはないそうです。ボトリングしないので、ソレラシステムで継ぎ足しして熟成させることもせず、このまま何十年も置いておくのでしょうね。そして、ナバソスなどの特別なシェリーとして販売されるのでしょうか…。ああ、そうなると全く手が出ません。


¡Viva ワイン! こちらの大樽は、同じくペドロ・ヒメネスのとても古いもの。1樽だけです。


シェリーってビジネスとして考えると、ソレラシステムで品質を均等にしていくことでバラつきを押さえる事が出来る半面、発酵させてから最低でも2年は寝かせないと出荷出来ないので、普通のワインと違って即お金に変わる訳ではないので、根気と資金力が要る仕事ですよね。フランスのボジョレ・ヌーボーなんて、その年に収穫したブドウで作られたワインが高い価格で売られているんです(大半は空輸代ですが)から!ヨーロッパ経済危機の影響(特にスペイン危機は酷い)をもろに被って、シェリー業界もご多分に漏れず大変と聞いていたのですが、それでも人々はバルで憩い、祭りと聞けば皆着飾って朝まで飲み歩く…。スペインってやっぱりいいなぁ~と思ったのでした。


¡Viva ワイン! ハイメのボデガ同様、レイ・フェルナンド・デ・カスティージャのボデガにもブドウの木が。抜けるような青空!この空を見るだけでシェリーが飲みたくなります(笑)


レイ・フェルナンド・デ・カスティージャは、シェリーの他、シェリーブランディーも作っていて、最後にブランディーのボデガに案内していただきました。


¡Viva ワイン! 道路を渡った向かい側にあったブランディーのボデガ。こちらの方が天井が高く樽もゆったり置いてありました。


¡Viva ワイン! アルタミラではこちらのシェリーブランディーの取り扱いはしていないのですが、もともと、オーナーのジャン社長はオスボルネ(牛のマークでお馴染みのオズボーン社)でシェリーブランディーの輸出を長年に渡ってされてきた方なので、シェリーブランディーに力を注いでおられます。ペーテルセンという名前(ジャン社長の苗字)のブランディーをノルウェー向けにリリースしているとか。


¡Viva ワイン!      ¡Viva ワイン!

ブランディーのボデガの外壁。


この後、ソファに座って生ハムやチーズをつまみながら、ジャンと色々な話をしました。勿論、シェリーをいただきながらです。訪れる度に新しい何かを感じられるレイ・フェルナンド・デ・カスティージャ。


そして、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアという町に向かうのですが、次回に続きます。