28日の午前中は、予てより約束をしてワイナリーを見せていただくことになっていたカサール・デ・ブルビアに行きました。
ここのワイナリーのオーナーさんは、過去記事でご紹介した街、ポンフェラーダにお住まいです。
ワイナリーのあるヴィラ・フランカ・デル・ビエルソ(長いのでビエルソと書きます)までは約20km。
僕の後をついて来てと言われ、車はこんな門をくぐって止まりました。
州政府のリンゴの統制委員会の施設でした(後で知ったのですが、彼の家はブドウの他、梨やリンゴも作っています)。
ここに我々のレンタカーを置かせていただいて、彼の車(四駆)でブドウ畑に行きました。
いやぁ、四駆でないと絶対無理っつーか、四駆でもここは道なのって所を走り、途中、巡礼の方々を抜いてブドウ畑にやって来ました。
Casar de Burbiaと看板に書いてあるのがお分かりになりますでしょうか
この辺りのワイン(DOビエルソ)の説明をするために、この看板に書いてあることを転記します。
Santo lugar de San Salvador
Viñedos de la Bodega Casar de Burbia [Pago P3]
サント・ルガール・デ・サン・サルバドール、ワイナリー、カサール・デ・ブルビアのブドウ畑(生産区域 P3)
Cuenta la leyenda que un peregrino francés trajo, en su canimar, la uva Cabernet Franc a esta región. Con el paso del tiempo, la planta se adaptó al terreno y clima del Bierzo, dando lugar a la actual variedad autóctona berciana, la uva Mencía.
言い伝えによると、フランス人の巡礼者が巡礼の道の途中で、カベルネ・フランのブドウ(フランス原産のブドウです)をこの土地にもたらしました。時が流れ、植物はビエルソの土地と気候に適応し、現在の土着種であるメンシアというブドウになったのです。
DOビエルソのワインの特徴は、メンシアという品種の黒ブドウを使ってつくる赤ワインです。
このメンシアという品種、このビエルソという地域と、その他ガリシア州で栽培されている他は作られていません。
他の地域では、土地や気候が合わなくて育たないのだろうと思います。
フランスから巡礼の道を通ってやってきた巡礼者が持ってきたカベルネ・フランがこの土地に根付いて、メンシアになったと言われているそうです。
実際、洗練された上品な味で、黙って出されたら、ちょっと濃いめのカベルネ・フランかと間違える人もいるかもしれません。
ちなみに、オーナー(イシドロといいます)の2歳になる娘の名前はメンシア。ブドウと同じくらい愛する娘にブドウの名前をつけたのねと感動してたら、こちらの地域では結構普通にある名前なんだそうです。
この看板、説明書きの下にホタテガイの絵と矢印が描かれています。
もう、お分かりですね「巡礼の道はこちらです」という意味です。
ここまで長い上り坂になっていて、この看板の辺りが頂上です。巡礼者はここで一休みして、今度は山を下って行くそうです。
ここのブドウ畑は非常に古いそうで、樹齢80年以上のブドウの樹もたくさんあるそうです。
何年前からあるのと聞いたところ、さっき下で会った奥さんが76~7歳で、彼女が子供の頃から既にあったと言っていたからそこまでは分かるけれど…という答え。
そりゃあ、そうですね。畑を買った時に、記録した書類はなかったそうです。
他の所の古い畑も同じなのですが、白ブドウと黒ブドウが混在していて、勿論トラクターなどは入れないので、全て手作業で行うとのこと。
モンテバコのブドウ畑ではまだ実を結んでいなかったのですが、こちらでは小さな実をつけています。気候はこちらの方が穏やかだからなのかしら…
こちらの画像の方が分かり易いでしょうか…小さな実がご覧いただけたかと思います。
畝と畝との間隔も空いているので、トラクターが使えます。
こういう過酷な土地でつくられたブドウから、あんなに美味しいワインが出来るんですね~(しみじみ)。
リベラ・デル・ドゥエロのモンテバコの畑が石灰質だったのに比べ、こちら、ビエルソの畑は石ころの畑です。
拡大するとこんな感じ。
最初に見た、樹齢が古い樹がある畑も石ころです。
オーナーのイシドロが言うには、この石ころの土壌が良いブドウをつくるのだとか。
やはり過酷な環境で育つものは、頑張って生き延びようと努力を惜しまないのでしょうか…
って、あたしは出来れば苦労などせずぬくぬくしてたいけどなぁ…
畑を見せていただいてから、ビエルソの街に下りて、ワイナリーを見せていただいたのですが、畑から下りて行くのに、こんなところを四駆で下りたり…ディズニーランド状態でした
途中、彼の畑の草取りの作業をしている2人に会ったのですが、作業中にもかかわらず車の通り道に置いてあった荷物をどけてくれて、ちょっと感激。
収穫の時期は大勢の人を雇って収穫するそうですが、普段は信頼出来る人に農作業を任せているそうです。その中の一人はパキスタンの人だと言っていました。
さすがは巡礼者で古くから栄えた街だけあって、至る所中世っぽくて可愛い街です。
巡礼者を泊める宿もあって、そして教会がやたら多くあったのが印象的でした。
機会があったら、このビエルソの街もゆっくり見て回りたいです。
ビエルソまで来ると、巡礼の最終点、サンティアゴ・デ・コンポステーラはもうすぐ近くなのです。
ワイナリーは、レンタカーを置かせていただいた州政府のリンゴ統制委員会の近くにあります。
シャッターを開けてもらって中に入ると、所狭しと樽が並んでいました。
モンテバコの樽は楔で止められていましたが、カサール・デ・ブルビアの樽は専用の器具で固定されています。
ワイナリーには、ワインの味を決める醸造家がいるのですが、外から専門の人を雇うワイナリーもあるけれど、こちらのワイナリーはイシドロが醸造家です。
ワイナリーの片隅に、彼のラボがあって、さながら理科の実験室のような器具が所狭しと並んでいました。
まずは完成品をテイスティング。
次に、樽熟中のワインを次々にテイスティングしました。
今回のテイスティングで興味深かったのは、樽による香りの違い。
アメリカンオークとフレンチオークを使って熟成させているのですが、樽によっては、樽の回り(丸い部分)はアメリカンオークで、樽の左右の平らな部分はフレンチオークという樽もあるそうです。
色々な樽から抜いて飲ませていただいたのですが、Aの樽のものはタンニンがしっかりしているが香りが弱い。Bの樽のものはバニラ香が強いがアフターがあまり感じられない。
では、AにBを注いで飲んでみて みたいな感じに。
こういう話をしている時のイシドロは、さながら少年のようでした。
ホントにこの仕事が好きなんだな~、そして彼が精魂注いで育て上げたワインを飲める私は幸せだな~と思ったのでした。
ワイナリーを出た所で、イシドロのお父様とバッタリ会いました。
ワインはどうだったかと聞かれたので、とても素晴らしいワインですねと答えると、私はああいうテイスティングは好みではない。ワインは食事をしながらゆっくり飲むものだからね~と笑っておっしゃいました。
お父様、後でイシドロに年齢を聞いたら76歳だそうですが、とってもシャキっとしていらっしゃいました。今でもアップダウンの激しい畑に日に3回は行かれるそうです。
イシドロに畑には毎日行くのと聞いたら、ワイナリーには試飲会や見本市がある時意外は毎日行くけれど、畑には週に1度くらいかな…と言っていました。
このお二人、対照的ですが、美味しいワインをつくるにはとても良いコンビだと思います。
こちらのワイナリーのワインは、まだ日本に入ってきていません。
日本でも飲める日が来るといいなぁ…と思いつつ、ワイナリーを後にしました。