世間は猫ブームだと騒ぎたてて、
何かにつけて、猫をチョイスしてみたり、猫関連の番組を企画してみたり・・・
今まで、犬ほど注目されてこなかったから、
猫を話題にしてもらえるのは嬉しいなと思う一方で、
ブームに乗っかって猫を飼ってみようと安易な考えの人が増える危険も考えてみたり・・・
小さい頃から猫好きだったアラフォー獣医師 浜崎菜央です。
猫好きだというと、
犬好きな人たちから
「あ、あの先生は猫好きなんだって。
犬は好きじゃないから、大事にしてくれないんだろうな」
って言われちゃうのが嫌で、
猫好きだって言い切れないんですけどね・・・
どっちが好きか？ってよく聞かれるけど、
私どっちも大好きです
（欲張りっ！）
だって・・・
それぞれの良さがあるんだもんっ・・・
ただ言えることは、
犬好きな人は、猫好きとは限らないということ。
猫好きな人は、犬もオッケーって人は多いけど、
犬好きな人は、あの忠実なところ、人懐っこいところが好きなので、猫のツンデレの部分が許せないって思う人が多いんですよね・・・
話は戻って・・・
今日は、
野良猫を保護したときのお話をしようと思っています
うちの病院は、
どうぶつ基金協力動物病院に登録してあったり、
普段も『さくら猫』についてや『保護猫』について『殺処分』についての話をブログでするからか、
「野良猫」や「保護猫」の相談の電話を受けることが多いのです。
電話をくれた人とまずはお話するのだけれど、
どういう状況なのか、
どうしようと思っているのか、いろんなことを聞き出します。
例えば・・・
「野良猫が家に来てて、増えると困るから手術したいんだけど・・・」
というお話。
増えると困りますもんね、わかります
（だからこそ、協力したいと思っているわけで・・・）
同意しつつ、話を聞いていると・・・
「でも、うちの子じゃないし、お金ないし・・・
で、そこはさくら猫活動してるんでしょ？無料でしてくれるんですよね？」
って言われるんです。
ノーッ
NO
NO
NO
あのね、いくらなんでも無料ではできないですよね
『ひどい獣医だ
もっと親身になってくれよ』
って言われるだろうか・・・
いやいやいや
よく考えてみてください。
麻酔をかけることも、
手術をすることも、
命を預かって無事に手術を終え帰す・・・
大きな責任であり、大きな仕事なのです。
いつもやっていることとはいえ、
いつも毎回、責任をもって、大事に扱い、大事に手術をこなして帰しているわけです。
このお話は、前に書いたことがありました。
この責任にプラスして、
麻酔にかかる費用、
手術で使う器具や縫合糸、
手術の際に発生する人件費、
厳密にいうと、やっぱりいろんな費用が発生してるんです。
それに対して、
サラッと簡単に
（
これ大事な表現）
「無料でやってくれるんでしょ？」
っていうのは理解できません
確かに、私自身、猫が好きだからこそ
野良猫が嫌がられないように、
野良猫が増えないようにして、寿命を全うできるように、
協力したい
って気持ちはたくさんあります。
ただ・・・
それを無料で提供するかどうかは別の問題だと思うんです
（せこいって言う人いるでしょうね・・・でも、人が生きていくためには必要なことでもあります。獣医師も人ですから。）
私が宝くじに当たって、大金持ちになったなら、別ですが・・・
（いつも当たったら保護施設作ってやる！って思ってるんですけどね・・・）
協力したいって思っていても、
サラッと簡単に
（これ大事な表現）
「無料でやってくれるんでしょ？」
って言われると、
イラっとするものです。
（人間だもの・・・）
サラッと簡単に言うけど、
簡単に無料にはできないよね・・・
「気持ちはわかるけど、残念だけど無料ではできないですよね・・・」
と伝えると、
「いやいや、だってうちの子じゃないし」
「野良猫だよ？関係ない子だし」
「うちも何匹も保護してて、お金ないんだもん」
などなど
いろんな言い分が出てくることも多いんです。
はい・・・
わかります。
事情はとっても・・・
でも
これもよく考えてほしいんです。
なぜ、お家に居座っているか？
ご飯を与えていませんか？
何もしてない家に居座ることなんてないと思うんです。
野良猫だから関係ない・・・
そうですね、おうちがない子だから、もちろんあなたのうちの子ではないし、
関係ない子でしょう。
でも、ちょっと冷たい言い方をすると、
あなたが相談している保護団体や私たち動物病院にとっても、関係ない子ですよね。
（もちろん、そうであっても、なんとかしようと思うから、最終的に協力するわけですが、でも、こういう意見も出てくるのも事実）
たくさん保護してきて、お金がない・・・
その気持ちもわかります。
これも冷たい言い方をすれば、
お金がないのであれば、保護しない勇気も必要だと思います。
ご飯を与えない勇気、居座らせない勇気も必要。
お金がないから、病院で無料でやってほしいっていうのは、ずるいと思うんです。
自分たちはいいことをしてる
いいことをしようとして相談してるのに、
あなたは鬼だ
というふうに思われたり、言われたりすることもあります。
今私は、動物病院で相談されるとしたら・・・という話をしてますが、
これは『保護団体』に向けても同じことが起きているんです。
保護してほしい
と簡単にいう。
（すんごく考えて申し訳ない気持ちたっぷりでいう人もいらっしゃるので、その方には申し訳ないのですが・・・）
保護団体だから、保護してくれて当たり前
そう思っている人がほとんどだと思うのですが、
保護団体はどうやって保護しているか
どんな状況なのか
少しは思いやってほしいんです
これは一般の方だけでなく、行政側も言えること。
行政に一般の方から相談があると、
「あ、それなら保護団体に連絡して相談してみてください」とか
「動物病院の先生に相談してみてください。ルオーナに電話してみて」とか
サラッと伝えるんですよね。
（サラッとというのが大事）
私、頭にきて、
行政に文句言ったことがあります。
（クレーマーかよって言われるかもだけど・・・でも思いやりがなさすぎるんだもん）
「あなたたちは、保護団体に連絡して相談してみてって簡単に任すけど、
保護団体の人たちがどんな思いで、どんな状況で保護しているか、わかってるんですか？
誰かに任せるのは簡単だし、楽なことでしょうが、
任される身になってみてください。
どこからも十分な支援があるわけでもないのに
行政が支援してるわけでもないのに
簡単にそれはあっちに連絡してって簡単に回さないでっ」
ってふうに。
もちろん、保護団体も私と同じ気持ちだと思うんです。
かわいそうな子たちを一人でも多く保護してあげたい
幸せに暮らしてほしい
増えないようにして嫌われないように生活できることを望んでる
でも、その気持ちだけでは
実際は成り立たないことってたくさんあって、
どの場面でも、
お金が必要になったり、
人手が必要になったり、
スペースが必要になったり・・・
いろんな問題を抱えながら、
でも絶やしてはいけない
という思いでやってるんです。
だから、
サラッというのだけはやめてほしいんです
自分勝手すぎる
って思いながらも、
結局放っておけなくて、
保護したり、手術したりするんだけど、
でも、
その行動の奥には、
いろんな思い、いろんな苦悩があることを理解してほしんです。
自分が一番いいことをしてる
って思ったら間違い
自分のためにサポートしてくれる人がいることに感謝すること、
自分のためにいろんなものを削って対応してくれることに感謝すること、
サラッというのではなく、申し訳ないって気持ちをなくさないこと、
それが大事なことだと思うんです。
思いやりって大事だと思うから・・・
こんな勝手なこというから、
連絡してこないでとか
相談してこないでとか
ってことじゃないんです。
困っているなら、
話を聞くことも、
どうしたらいいのかを伝えることも、
（詳しい人の方が、いろんなことを伝えられるからね）
こうやったほうがお金がかからないって方法を伝えることも、
（助成金のシステムのことも、保護団体や私だから知ってることもあるしね）
いろんなことができる場所でもあるんです。
だから、全然話は聞くんです
でも、
上から目線で言ってきたり、
当たり前のように言ってきたり、
こっちはいいことやってやってんだよって感じで言われたり・・・
そんなふうな態度はないなと思うんです。
お願いや相談をするのであれば、
もう少し思いやりをもってほしいなって思うんです。
偉そうなこと言いやがってっていう人いるでしょうね。
でも、
その人ができないことを代わりにする人の方が偉いに決まってる
って私は思います。
言い出しっぺが偉いんじゃなくて、
それを成し遂げる人こそ偉いんだと思うんです
だから、この記事は、連絡するなってクレームではなく、
連絡するにあたっての心構えというか思いやりについての意見だと思ってください。