某市内の市民ホールで開かれた「新人漫才コンクール」の決勝戦。優勝候補だった漫才コンビ「ポテトフライ」が、舞台上でネタを披露している最中に、なんとステージ上の「優勝賞金100万円が入ったアタッシュケース」が、観客の目の前でスッと消えてしまった。
現場に駆けつけたのは、小柄な体をせわしなく動かすスモール探偵である。彼はステージ上のマイクの前を飛び回り、客席に向かって得意げに声を張り上げた。
「ふははは! 観客の皆さん、ご苦労様です! この程度の舞台上での失踪事件、私スモールがボケをかますよりも速く解決して差し上げましょう!」
1.スモール探偵の踏みとどまり、からの大やらかし
スモール探偵は、ステージの床に転がっていた「黄色い付け鼻」と「お笑い用ハリセン」を見つけ、手を伸ばしかけて……ピタリと動きを止めた。
「……いや、待てよ? 前回の事件で、私は解析アプリと称してスマホを破壊し、証拠映像を全消去してしまった。同じ轍は踏まない! 今の私は、演出家のように現場を再現し、真犯人を炙り出す『舞台探偵』へと進化したのだ!」
スモール探偵の立派な(?)成長に、観客たちは少しだけ拍手を送った。
「皆さん、舞台とは照明と視覚マジックです! 犯人はこの漫才コンビのどちらかだ! 舞台裏に隠した『鏡のトリック』を使ってケースを消したに違いない! 私が自らそのトリックを解明し、皆さんにお見せしましょう!」
スモール探偵はドヤ顔で、舞台の袖にあった「大型の照明用スタンド」を力任せに引き寄せ、ステージ中央へと滑らせた。
「こうして照明を乱反射させれば、隠された鏡の位置が——うわあっ!!」
スモールがスタンドを滑らせる勢いが強すぎた。重い照明スタンドはステージ中央の「せり上がり機能」のスイッチを直撃!
ドガーンッ!! という地響きと共に、ステージ中央が激しくせり上がり、上に乗っていたスモール探偵は天井近くまで勢いよく打ち上げられた。そのまま照明のトラスに頭から激突し、さらにはステージ上の吊り下げ式大幕(どんちょう)を巻き込んで、ホール中が真っ暗な幕の中に包まれるという大惨事に!
「ふ、ふががっ! 犯人は……幕の中に……っ!」
黒いどんちょうに包まれたまま、ミイラのように吊るされるスモール探偵。観客は「なんて面白い演出なんだ!」と大爆笑し、コンクールは最優秀賞を与えるべきと盛り上がってしまった。
2.覆る真実
「あーあ、また大惨事だ……」
黒い幕から転げ落ちて気絶したスモール探偵を横目に、スタッフが頭を抱えた。
「あの賞金ケース、犯人が盗んだんじゃなくて、コンビのボケ役が『ネタの最中にケースを後ろに隠す』というドッキリを仕掛けてただけだったんだよ。ケースは舞台裏のロッカーにちゃんと入ってた。それを探偵が舞台ごと破壊したせいで、今やホールは修復不可能の大赤字だ……」
つまり、事件は最初から「ただの笑えるネタの一部」であり、探偵が乱入したことで、単なるお笑いが「物理的な破壊を伴う大事故」へと進化してしまったのだ。
3.ビック探偵の巧妙なトリックを使った解決
「仕方ない。僕が後始末をしよう」
ステージの惨状の中、長身のビック探偵は、どんちょうの下で呆然とするコンビ「ポテトフライ」の前に優雅に現れた。
「スモール君がホールごと舞台を破壊するという、前代未聞の大仕掛け(アシスト)をおかけしたようだ。しかし、犯人は『観客を楽しませる』という漫才の精神を忘れ、金に目が眩んでいる。だから、少しばかり『トリック』を使わせてもらおう」
ビック探偵は、ボケ役の男をじっと見つめた。
「あなたはネタの最中にケースを隠したと言いましたが、ロッカーを開けてもケースは空でしたね。あなたは最初からドッキリなんて予定しておらず、本気で賞金を盗むつもりだった」
「は、ハッタリを言うな! 証拠なんてないぞ!」
「なるほど」ビック探偵は懐から、カジノで使った「フラッシュペーパー(燃える紙)」を取り出した。
「私は今から、この紙に『あなたの罪の告白』を書き、火をつけます。もしあなたが無実なら、この紙は灰になるだけ。もしあなたが嘘つきなら、この紙は燃えた瞬間に、『あなたの犯行の瞬間を録画したスマホの場所』を空中に投影する魔法の煙を出します。3、2、1……」
ビック探偵がライターで火をつけると、紙はパッと燃え上がり、白い煙を上げた。
「ほら、そこに煙が! 隠し場所を言え!」
「ひぃっ! 舞台の裏の、照明のバトンの中だ!!」
勢いよく答えた瞬間、男はハッとして口を塞いだ。
「ご丁寧な自白、ありがとうございます」
ビック探偵は、燃えカスをトレイに落とした。
「な、なんてことだ……私は照明のバトンの中に隠したのに……!」
「そんな魔法の煙があるわけないでしょう。あなたがパニックで嘘をつくのを待っていただけです」
ビック探偵は、呆然とする男を警察に引き渡し、無事(?)賞金を回収した。
「お見事です、ビック探偵ーっ!!」
頭を幕に巻き付けたままのスモール探偵が、涙を流して叫ぶ。
「……漫才のネタより、僕のトリックの方がよっぽど滑稽だったようだがね」
ビック探偵は、どんちょうを脱ぎ捨てようとジタバタするスモール探偵を冷ややかに見下ろすと、静かに会場を後にした。
「本物の『まぬけな漫才師』は、客を笑わせるためではなく、ありもしないハッタリ(マジック)に踊らされて、自分だけが一番滑稽な姿で自白してしまう人間のことだよ」
ビック探偵は、最後にボソッと一言だけ付け加えた。
「……スモール君、今度からは僕が相棒として舞台に立とうか。君のあの『ダイナミックなボケ』があれば、きっと日本一になれるからね」