書いた手紙、紙ひこうきにして飛ばすように。 -3ページ目

書いた手紙、紙ひこうきにして飛ばすように。

語りえないものについては、沈黙しなければならない。

AZUIKI七は、私のもっとも影響を受けた作詞家だ。

作詞をするときでも、つい似た歌詞を書いてしまう。

音楽プロデューサーの亀田誠治は、世の作曲家志望に向けて、
「憧れの人に似ない努力をすることが大切」
と語っているが、作詞にも同じことが言えるだろう。

私も、AZUKI七の影響下から、自分のオリジナルを生みだしたいと思ってはいるが、
気を抜くとつい、劣化コピーのような歌詞を書いていたりする。

今回の「作詞家列伝」は、そんな憧れの作詞家、AZUKI七を扱う。

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AZUKI七は、GARNET CROW(以下、ガネクロと表記)という音楽集団で、キーボードと作詞を担当している。

ガネクロは、もともと、音楽制作で裏方的な役割をつとめていた(アレンジャー、作曲家、作詞家など)4人が集まってつくったもので、いわゆる「ビーイング系」に分類されるが、一過性のブームやアイドル的人気ではなく、その良質な楽曲で10年以上の長きにわたってファンからの支持をうけつづけている。

ガネクロの楽曲制作は以下のようなプロセスで行われるという。
まず、ヴォーカルの中村由利(ゆりっぺ)が曲を書き、英語で適当な歌詞をつけてAZUKI(七様)に渡す。
AZUKIがそれに歌詞をつける。
同時並行で、キーボードの古井弘人(おっさん)がアレンジをし、ギターの岡本仁志(おかもっち)がギターフレーズを録音する。
完成した曲に中村が歌を入れる。

結果として完成する楽曲は、厳しい音楽ファンの鑑賞にもたえうる、現行のJ-POPには珍しいともいえる、高い完成度を誇っている。

ベスト盤もあるので、未だの方は是非一聴してほしい。
一般には、アニメ「名探偵コナン」とのタイアップ曲である「Mysterious Eyes」や「夏の幻」が有名だろうか。

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さて、AZUKIの歌詞は、いい。

描かれる世界観は、陽だまりのような、どこかセピア色がかった日常の風景である。
詞の中で、人は、公園で髪を切ったり、小舟を水に浮かべたり、窓の向こうにひこうき雲をなぞったりする。
現代の都市の中でせかせかと生きている私たちに、忘れていたような感覚をよみがえらせてくれる、詞である。

明るい楽曲でも、どこか切なさ、儚さを内包しているのも彼女の詞の特徴である。
やがて去りゆくものへのいとおしさ、無情さゆえの愛。
そんなテーマも見えかくれする。

古典文学への影響も垣間見える。
たとえば、「君の思い描いた夢集メルHEAVEN」という曲には、
「ノヴァーリス」と「青い花」という単語が登場する。

ドイツの詩人ノヴァーリスの未完の作品が「青い花」というタイトルなのだ。

夢の中で青い花を見た少年が、それを求めて旅に出る。旅の途中で少年は、他の旅人や隠者、鉱山夫といった様々な人と出会い、成長してゆく……というのが第一部。第二部では雰囲気ががらっとかわっているのだが、この第二部は未完に終わっている。

ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスター」に影響を受けて書かれたビルドゥングス・ロマンの一種で、岩波文庫に収録されている。

――が、こんなマイナーな作品を読んでいること自体、ただものではない。
かつてボブ・ディランはミュージシャンを目指す若者に、
「現行の音楽を聴かずにキーツやメルヴィルを読むべき」と薦めたが、
キーツやメルヴィルの方がノヴァーリスに比べればだいぶメジャーだろう(ちなみに私はキーツの詩も、けっこう好きである)。

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たまにラジオなどでAZUKIのトークを聞くと、正直、かなり変わった人という印象を受ける。

極度にマイペースで、ワガママなのだ。
トークの流れも気にせず割り込むし、リスナーからのメールなどにも、普通はお愛想程度の受け答えをするものだが、AZUKIは気が乗らないと「ふーん」で受け流したりもする。

でもまあ、これくらいのマイペースさがないと、彼女の歌詞のような、まとまった世界観はつくりだせないような気もする。

蛇足ながら、彼女の美貌に憧れるファンも多い。

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