さて、ベースである。
作詞については、一番書きたかったことは全て書いてしまった。
そこで、私の好きなベーシストについて書くことにする。
私はバンドでは作詞の他に、ベースもやっているのだ。
もちろん私はポールマッカートニーやジョン・ポール・ジョーンズ、亀田誠治といった有名なベーシストたちも大好きだ。
しかし、彼らについては語りつくされている観もある。
そこで、私が語らねば誰も語らないようなベーシストについて書こう。
いわばアンサング・ヒーローの歌だ。
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第一回は愛華。
誰?
MARIAというガールズバンドのベーシストだ。
このバンド、ツインベース、ツインボーカルという仕様だった。要するにベースボーカルが二人いるわけだ。
一人は愛華。そしてもう一人は、元ZONEのベーシスト舞衣子(ZONE時代の表記はMAIKO)である。
ZONEを解散した後、メンバーは各自の道を辿ったわけだが、唯一バンドでの活動という形にこだわったのが舞衣子であった。
いろいろな理由があったのだろう。そもそも、ベーシストにソロ活動は厳しい。舞衣子は声が細いのでソロシンガーに向かないというのもある。
そんなわけで、ツインベースという変わった形のバンドを組んだのだろう。
さて、そこでもう一人、ベースを担当したのが愛華だ。
むろん、MARIAは実質的には舞衣子のワンマンバンドである。
そこで、舞衣子はベースでルート弾きをしながら歌うという形をとる。
もう一人の愛華はなにをするか。
高音域を駆使して、ベースでアルペジオっぽいプレイをするのだ。
そんな変態プレイをしながら、コーラスやユニゾンもキメてくる。
実際にやってみるとわかるが、ベースボーカルというのは、かなり難しい。
少なくとも、ギターボーカルよりも難しい。
手と口が、別々のリズム、メロディーを刻まねばいけないからだ。
ただでさえ難しいベースボーカルを、アルペジオを弾きながらこなす愛華はただ者でなない。
歌の合間にはベースソロも入れてくる。
たとえば「ありがとうの言葉から」という曲。
この曲のライブ版を観ると、舞衣子はボーカルに専念して、ベースを弾いてない。いわゆる立ちボである。
そこで愛華一人がベースを弾いているわけだが、愛華は大人しくルート弾きをせず、ここでも高音域を使った、コード感あふれるプレイをしている。
実際、観た感じも異様である。ベースではあまりつかわれない、ネックの付け根付近に手を固定しなが
ら目は前を見て、マイクに向かって歌っているのである。
これも実際にやってみればわかるが、ネックから目を離して歌うのは難しい。
だが、まあベースボーカルならば練習次第でできるようになる。私だってできる。
しかし。
しかし、だ。
ベースという楽器は(他の弦楽器もそうだが)、高音にいくほどフレットの感覚が狭くなるのである。
だから、たとえば3フレットと4フレットを押し間違えることはあまりないが、13フレットと14フレットは、すごく間違えやすい。
愛華はそんな間違いやすいフレットを使って、目を離してプレイしているのである。
やはり、ただ者ではないのだ。
私もいつか彼女のベースラインを盗んでやろうと思っているのだが(彼女がラインを考えているかはともかくとして、だ)、未だにあんなに奇怪なラインは弾けない。
そもそも、ベーシストというのは、低音を出す仕事である。ベースが弾いていないと、バンド全体の音からは低音域だけがなくなり、ひどくアンバランスな感じになるのが常だ。
低音を嫌った(かどうかは知らないが)ベーシストといえば、愛華かジョー・オズボーン(カーペンターズの音源のベース)くらいである。
低音域を弾かなかったベーシスト、愛華。
彼女は、アイドルである舞衣子を引き立たせねばならないという立場から、
逆に誰にも真似できないような演奏スタイルをつくりあげたのであった。
MARIAが解散した今、彼女はどこでなにをやっているのだろうか?
