秋元康という名前を聞いて、人はどんな表情を浮かべるだろう。にやけた笑顔、しかめっ面、尊敬のまなざし……。
尊敬? そう、尊敬。
一般的に揶揄され、やっかみや嫉妬もこめられた批判にさらされることの多い秋元だが、彼を尊敬する人もいる。
月刊カドカワの別冊として出された『特集 失われた詩人としての秋元康』には、秋元周辺で仕事をしている人々が多数記事を寄せ、ほとんどタイコモチのような賛辞を並べている。
距離をとった評ができている寄稿者は宇野常寛と斎藤環くらいのもので、残りの寄稿者の賛辞は、読んでいて気持ちが悪いほどである。
さて、秋元康である。AKB48のヒットで昨今プロデューサーとして名高いが、そのAKBの作詞をほぼ全曲にわたってつとめ、その長いキャリアの中では、おニャン子クラブのプロデュース&作詞や、他のアーティストへの詞提供(美空ひばりの「川のながれのように」が有名だろうか)も行ってきた。
さて、このブログは作詞ブログ。この記事は「作詞家列伝」の第三回、ということで、秋元の作詞家としての側面に光をあてたい。ちなみに前述の月刊カドカワも、「詩人としての」と銘打ってはいるが、編集者(インタビュアー)含め、ほとんどがタイコモチのため、まともな資料的価値はない。
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秋元作詞のポイントは大きく分けて3つある。
1つ目。秋元の詞で印象的なのは、本人もたびたび語っているが、「王道と奇策とのバランス」である。これは作詞講座の方の読者にも参考になるだろう。秋元の詞を読んでみて欲しい。いかにもな言葉がちりばめられたベース生地に、「おっ?」という独特な言葉のトッピングがちりばめられている。これはどちらが欠けてもだめだ。
全部が王道の歌詞でもどこかできいたような歌になってしまうし、逆に全部が奇策では、どこかのインディーズバンドのようなわけのわからない歌詞になる。
2つ目。先ほど、「王道のベース生地に奇策のトッピング」という表現をしたが、「喩え」が多いのも秋元の特徴だ(ちなみにこの喩えは私のオリジナルだが)。
具体的な詞のフレーズだけではなくて、インタビューで話すときもそうだし、あるいは詞のコンセプト自体が「喩え」だったりもする。たとえば、AKBのメンバーを野菜に喩えたら、どうなるだろう?といった具合だ。
3つ目。日本語の言葉遣いに忠実である。これは先述の月刊カドカワの中で岩崎夏海も述べているが、秋元の歌詞は、音程が日本語の言葉にちゃんと沿っている。
たとえば、あるメロディーに
「海にかける橋」
と入れたいと思ったとしよう。
「海」の音程は「う ↘ み」であり、「橋」の音程は「は ↗ し」だ。
もし、この部分のメロディーが、「う → み」と「は ↘ し」だったら、
「生みにかける箸」
としか聞こえなくなってしまう。秋元の歌詞には、こういったミスが極端に少ないのだ。
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さて、今年に入って、秋元はAKBを改革しようとしているという。ひとつに、作詞を自分以外にも任せようというのだ。私は、これは外注というよりは、メンバー(たとえば北原里英)にも作詞をやらせてみようということではないかと思っているが(ついでにこれはとてもリスキーだとも思っている)、こう考えたからには、秋元が、このまま自分の歌詞で押し通すことに限界を感じているのだろう。
それは、一部のファンたちが指摘しているように、「秋元には、「君が好きだ片思い」パターンと「卒業するけどまた会えるよ」パターンしかない」からだ。
いや、正確にはこの分類は微妙に誤っていると私は思っているが、問題はそんなことではなく、ファンがワンパターンと感じ始めてしまっていることだ。秋元もそれに気付いているのだろう。
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あらゆる作詞家は、ワンパターンなものだ。
いや、ワンパターンではないにせよ、有限の主題しか扱えないと思う。秋元の持ち駒が他の作詞家に比べて多かったのか、少なかったのかは私には判断できない。
ただ、全ての作詞家にとって、持ち駒の数は限られているのだ。
かつて大塚愛も言っていたと思うが、詞は、体験したことからしか生まれない。
これは、作詞をしたことのある人なら誰でも、感じたことがあるだろう。
いや、私は妄想の力で詞を書く!という人もいるかもしれない。
しかし、たとえ想像力を駆使して書こうとも、想像の世界で使えるパーツは、自分が経験したことだけなのだ。自分が見たことも聞いたこともないパーツを組み合わせて歌詞を書くことはできない。
すくなくとも、私にはできない。
だから、作詞に挑戦しているあなたには、是非、色々な経験を積んでほしい。
書を捨てて、街へ出てほしい。
いや、もちろん本を読むことも大切だが、本だけ読んでいては、詞を書けるようにはならないのだ。
あとから振りかえってみれば、愛おしくてたまらないような、そんな宝石のような経験をしてほしい。
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――今回は作詞家列伝なのか、作詞講座なのか、よくわからない内容になってしまった。