今年の夏にBunkamuraザ・ミュージアムで行われた
「エリック・サティとその時代展」で、ピアノとバンドネオンで
サティの作品を演奏するというイベントを聴き、
そのときの音の響きがおもしろいと思ったので、
同じ演奏者であるピアノの中島ノブユキさん、バンドネオンの北村聡さんに
オーボエ&イングリッシュホルン、マリンバ、スティールパン&ギターという
アンサンブルでサティを演奏するコンサートを東京オペラシティの
リサイタルホールへ聴きにいきました。
前半は編集者の松村正人さんがファシリテーター役となり
中島さんと北村さんとのトーク。
中島さんはちょっとリリー・フランキーさんに雰囲気が似た方で
おっとりとマイペースな感じ。
最初にサティに触れたのは80年代で、なぜかそのころサティが
ブームになっていたころ。
サティの音楽はなかなかキャッチーだという印象があったそう。
一方の北村さんは、それまでサティの音楽には触れたことがなかったそうです。
Bunkamuraのときもそうですが、サティ作品のアレンジ担当は中島さん。
北村さんによると、中島さんのアレンジは元のものを変えてしまうというより、
元のものを違う編成、違う音色でつくっていくアレンジで、
そこが魅力なんだそう。
今回のアンサンブルにはオーボエが加わっているのですが、
中島さんによるとオーボエとバンドネオンは、「ダブルリード」という点で
親和性があると考えて編成したとか。
そして中島さん、北村さんとも、サティという音楽はつかみどころがない、
(中島さんいわく、「最後まで弾いても充実感がない」)、
聴いているときは自然なのに、弾くと予測できない音楽だと言われました。
サティの音楽には、演奏者に対する指示が入っていることで有名ですが、
中島さんは、その指示は「見て見ぬフリ」をするのだそう。
なぜかというと、そうしないと混乱してしまうから。
たとえばどう考えても忍耐が必要ではない作品なのに、
「忍耐せよ」という指示があると、どう忍耐したらいいかわからない…、
みたいなことが起きるそうです。
サティに対するお二人の想いを聴いて、
ますます楽しみになってきたところで、休憩をはさんでいよいよ演奏。
ピアノ、バンドネオンという組み合わせもおもしかったですが、
ピアノ、バンドネオン、オーボエ(イングリッシュホルン)、マリンバまでは
イメージできても、そこにスティールパンやギターが入るとどうなるのか、
見当がつきませんでしたが、聴いてみると意外に合います。
「ジムノペディ第1番」のイントロ部分はスティールパンの
ソロだったのですが、なんか幻想的でふわっとしていて
結構いい感じに合うのでびっくり。
そしてこのコンサートで注目したのは「ピアニーノ」という楽器。
「ピアニーノ」という言葉自体はアップライトピアノのドイツ語らしいのですが、
通常のアップライトよりも背が小さく、横幅も小さいので鍵盤も88鍵はなさそう。
この楽器は、中島さんが懇意にしている調律師さんのもので、
どこかの古道具屋に打ち捨てられていたのを引き取って、
何年もかけて修復したものだそう。
通常のピアノは1つのハンマーに対して弦が3本ないし2本張ってありますが、
このピアニーノは1つのハンマーに対して1本だけ弦が張ってあるので、
こじんまりした、ちょっとハープに似た音色だと言われました。
実際に聴いてみると確かにハープみたいな音。
もしくは、スコット・ジョップリンのラグタイム音楽なんかが
ぴったり合いそうな音色です。
サティの音楽は、ほとんどピアノ・ソロかオーケストラでしか
聴いたことがありませんでした。
でも、今回のような楽器編成で聴くとサティらしさがより際立った、
曲としてきちんと姿勢を正して聴く窮屈な音楽じゃなくて、
肩ひじはらない、リラックスした音楽により近くなるように感じました。
このライブ録音は、後日ハイレゾ配信されるそう。
これはぜひダウンロードしてもう一度聴かねば!