【駄文】智恵理とひと夏の記憶 | 夢追い人応援サイトfunfan!公式blog/応援ぱんだは今日もゆく

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これはひと夏の想い出
ちっちゃかった私の大切な記憶

8月、夏の暑さが私を責める
都会に居るよりはと田舎のおばぁちゃん家に
お姉ちゃんと2人泊まりに来た私だったけど

『やっぱり、暑いのは苦手だよ・・・。』

暑さは何処に居ても変わらなかった

『もぉ智恵理、そんなとこに居たら踏んじゃうよ』

小都お姉ちゃん、ちょっと抜けてるけど
妹の私から見ても可愛らしくて頼りがいのあるお姉ちゃん
そんなお姉ちゃんが私は大好きだ。

『だって・・・暑いんだもん』
『外の方が風があって涼しいよ、ちょっと散歩でも行ってきたら』
『・・・うん、ちょっと散歩してくるね』
『夕飯までには戻ってきてね』
『はーい』

木陰をぼんやり散歩
お姉ちゃんの言うとおり風がある分
家の中よりは少しは涼しかった。

おばあちゃんの家の裏には小さな川があった
大きいとは到底言えないけど綺麗な小川

そこで私は彼と出会った

小川の川辺に腰かけて
一人川に自作の竿で釣り糸を垂らす男の子
多分、年は私と同じ位。

『ねぇ釣れる?』
『全然ダメ』
『そうなんだ、それって楽しい?』
『まだわかんないかな』
『そうなんだ、ねぇ私見てていい?』
『うん、別にいいよ』

特に会話も無くただ2人して釣り糸を眺める
結局その日は一匹も釣れなかった。

次の日、彼はまた同じ場所に居た
私も何となくそこに居た。

『ねぇこれって楽しい?』
『まだわかんないかな』

次の日も、その次の日も
彼は同じ場所で釣り糸を垂らす
私はそれを横でぼんやり眺める
魚が釣れる日もあったけど
釣りあげても彼はすぐに逃がしてしまっていた。

そんな日が暫く続いた
が、当然のようにそんな日々も終わりを迎える。

『智恵理、明後日には家に帰るから忘れ物しないようにね』
『うん・・・分かった』
『お友達にもちゃんと挨拶してきなよ』
『うん・・・』

いつもと同じ場所に彼は居た

『今日は釣れた?』
『今日も全然かな』
『そうなんだ、あのね、私明後日には家に帰ることになったんだ』
『・・・そっか、見せたかったなぁ
 僕が主を釣り上げるとこ』
『ごめん、でも今日釣りあげれば間に合うよね!』
『まぁそうだね、じゃあ今日こそは頑張らなくっちゃね』

彼の横にすわり、彼の釣りを眺める
いつもと変わらない、いつもの光景

『・・・今日もダメだったね』
『うん、ごめんね』
『しょうがないよ』
『・・・なぁ、今日も夜此処に来てくれないか?』
『えっ?なんで?』
『来たら話すよ、だからちょっとの時間だけでいいんだけど』
『うん・・・なんとかしてみる』
『・・・約束だよ』
『うん、約束』

その夜、私はお姉ちゃんの目を盗んで
いつもの川辺に来ていた

『こんな時間に家の外に出たのばれたら
 後で怒られるんだろうなぁ・・・』

そんなことを呟きながら
私は彼の姿を探していた。

『来てくれたんだ、良かった来てくれなかったら
 どうしようかと思ったんだ』
『うん、早く帰らないと、ばれたら怒られちゃうから』
『うん、ちょっとこっち来て』
『うん・・・』

私が彼に歩み寄った瞬間
私の目の前を淡い光が横切った

『これ、見せたかったんだ』

淡く小さな光が1つ、一つとまたたいて
私はまるで星空の中に居るようだった

『この辺、ホタル多いから
 どう?綺麗でしょ』
『うん!すっごい綺麗!私こんな初めて』
『よかった、喜んでくれて
 ・・・いい思い出になったかな?』
『うん、すっごくいい思い出になった
 ありがとう』
『僕の方こそ、今まで釣りに付き合ってくれてありがとうね』

そう言って微笑む彼の顔が
私には今でも凄く印象に残っている

家に帰った私は心配していたお姉ちゃんに
こっぴどく叱られたんだけど・・・それも今ではいい思い出だ。

結局その夜以降、私は彼に逢うことはありませんでした。

智恵理
 これで私の想い出話はおしまいです

真紀
 ふーん、智恵理ちゃんにしてはロマンチックな想い出ね

智恵理
 真紀さん酷いですよ~。

真紀
 ごめんごめん

智恵理
 でも、今思うと、多分これが
 私の初恋だったんだと思うんです
 あの頃は気付いて無かったんですけど
 多分、私あの人の事好きだったんだろうなぁって

真紀
 で、その後どうなったの

智恵理
 えっ?これだけですよ。
 結局、名前も聞いて無かったんで

真紀
 あら、そうなの・・・
 でも地元の子だったんでしょ?

智恵理
 それが、彼も何処かから田舎に遊びに来てたみたいで・・・

真紀
 あら、手がかりなしなのね。

智恵理
 まぁ想い出は想い出ですから
 私は新しい恋探して生きていきますよ!
 あっ、もうこんな時間だ、お姉に怒られるんで帰ります。
 今日はごちそうさまでした!

真紀
 こちらこそ、素敵なお話をありがとうね

 はぁ初恋かぁいいなぁ。
 あれ?・・・でもあの話
 誰からか似た話は聞いたような・・・
 やっぱり気のせいね

これはひと夏の想い出
ちっちゃかった私の大切な初恋の記憶

Fin