#74 軽蔑 Le Mépris (1963) | 映画の楽しさ2300通り

映画の楽しさ2300通り

ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:家族・友情
製作国:フランス
監督:ジャン=リュック・ゴダール
愛するポイント:先を予測できない不安が楽しさを倍加するリアルな生活物語


 

ジャン=リュック・ゴダールの映画の面白さは、次に何が起こるかわからない予測のつかなさにあるように感じます。
泣ける映画や感動的な映画が陥りやすい予定調和的なストーリー展開は一切なく、観客はどこに連れていかれるのだろうという不安に駆られつつ、思いもよらない出逢いのスリルを楽しめます。

それはいたってリアルな物語の在り方かもしれません。映画に限らず演劇や小説で描かれる"人の生活"は妙に筋道だっていますが、実際の私たちの日常はそんな風ではないことは誰もが知るところ。
楽しいはずの予定が狂って右往左往するストーリーはよくありますが、そもそも楽しい予定を立てること自体が簡単ではないのが人生のリアルではないでしょうか。

本作のミシェル・ピコリブリジット・バルドーの関係もリアル。多分若いときに観ていたら気づけなかっただろうリアルさがそこにありました。
メトロポリス」(3つ☆)の監督フリッツ・ラングが登場するあたりから何が起こっているのかわかりにくくなってくるのですが、そこがまた現実にありがちな"生活はなかなか思うままにならない"雰囲気を醸し出しています。

ブリジット・バルドーは「素直な悪女」以外にはあまりこれと言った作品を観ていなかったのですが、本作で彼女の魅力を認識しました。「シェーン」の殺し屋(ガンファイター)以来様々な敵役を演じてきたジャック・パランスも彼のキャラクターらしい存在感を発揮しています。

 

ゴダールは気になる作家なので割と気にして観ているものの、なかなかすっきり感が得られない自分にとって、「軽蔑」は「気狂いピエロ」と並んで入り込みやすく楽しめた作品でした。

初見のときのレビューはこちらです。