#55 気狂いピエロ Pierrot Le Fou (1965) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:一般人が主役の犯罪映画
製作国:フランス
監督:ジャン・リュック・ゴダール
愛するポイント:わちゃわちゃ感が楽しく懐かしいゴダールの代表作

 



自分にとって、ジャン・リュック・ゴダール監督作品は"ちょっと無理して観ている"感があります。どういうことか簡単に言えば、彼が言わんとすることは何か、がつかめない、ということでしょうか。それでも本作と、まもなくご紹介することになる「軽蔑」は愛する映画となりました。

「気狂いピエロ」のお気に入りの部分は、今でいうわちゃわちゃ感でしょうか。"わちゃわちゃ"とは関西弁で"みんながてんで勝手にわいわいがやがや話している様子"だそうですが、観客側から見てまとまりに欠け、1点に集中しにくい登場人物とエピソード、およびその演出を表す言葉としてはぴったりのような気がします。

もうひとつ、気に入っている理由があるとすれば、それは大学生当時に勉学よりも打ち込んだ自主映画の製作現場を思い出させること。
もちろんゴダールの現場にはただの映画好き学生とは比べ物にならないセンスと技術と構成力を持った、つまり才能があるスタッフ/キャストが揃っていたでしょうが、場をセットしてカメラを回して演技をして、という行為には大きな違いはないわけで、そこに偶然か(我々の場合)故意にか(ゴダールの場合)生じたカオスのようなものを力わざでエンディングへと収斂していく、そんな感じが自らの経験とダブるのです。

もちろん実際の現場を見たわけではありませんが、当時の他の現場での撮影に比してアドリブや実験的手法や屋外でのロケなどを多用したという演出は、自主映画(シナリオが十分に練られていないためアドリブが多い、経験が浅いため実験的になりがち、予算がないのでロケ中心)の撮り方そのもののようです。

よく出来た、筋が通った、きれいにまとまった、感動的な映画を観たい、というよりわちゃわちゃした映画も面白いかも、と感じる方にはおすすめです。

初見のときのレビューはこちらです(ネタバレはありません)。