#66 蜘蛛女 Romeo is Bleeding (1993) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:刑事
製作国:アメリカ/イギリス
監督:ピーター・メダック
愛するポイント:サディスティックな悪女とマゾヒスティックなダメ男の命がけのかけひき

 



主人公が刑事なので「刑事映画」にジャンル分けしましたが、実際には「女性が主役」の映画とすべきだったかもしれません。
それほどに"蜘蛛女"レナ・オリンの存在感は強烈です。

存在の耐えられない軽さ」で自由奔放な女をセックスアピール十分に演じた彼女がそこに悪さとタフさを加え、抗いようのない魅力で主人公同様観客を虜にします。
原題はトム・ウェイツの曲からとったという”Romeo is Bleeding”なので、粘着質の網で獲物を絡めとるあの生物とは関係がなさそうですが(劇中でもそのような言及はない?)、ここでのレナ・オリンのキャラクターに対してはまさに言い得て妙の邦題だと思います。

さらに主人公に深くかかわる三人の女(レナ・オリン、「背徳の囁き」のアナベラ・シオラ、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のジュリエット・ルイス)がそれぞれに悪くタフかつ魅力的で、そういう意味でも女性が主役と言うべきだったかもしれません。

とはいえ、男性の主役も負けてはいません。主人公の刑事を演ずるのは、「レオン」の悪役で強い印象を残しただけでなく、「フィフス・エレメント」のぶっ飛んだ武器商人からクリスチャン・ベール版バットマン「ダークナイト」シリーズのいかした警部補まで、悪人善人取り混ぜ様々な役柄をこなすゲイリー・オールドマン。そこそこの知恵も能力もありながらそのだらしなさゆえに破滅してゆく男を好演しています。
狡猾で残忍、サディスティックでセクシーな悪女との丁々発止、とは言えないものの命がけなだけにスリル満点のかけひきにぐいぐい引き込まれるのは、小賢しさはあるものの性根がすわっていないマゾヒスティックな刑事の情けなさが、何とかしてやりたいと思う観客の応援心(親心)をくすぐるからでしょうか。

観終わって、「これは一体何だったんだろう?」と拍子抜けしてしまうくらい、気力を持っていかれる作品です。
以上、記憶を遡って書きましたが、気づいてみれば初見当時(2010年)にも記事をアップしていました。よろしければそちらもご覧ください(ネタバレはしていません)。