ジャンル:合法プロフェッショナルが主役の犯罪映画
製作国:アメリカ
監督:ジャック・スマイト
愛するポイント:反骨・不敵・不屈の主人公が複雑な人間関係の謎に挑む小気味よいハードボイルド・ミステリー
両親と親戚の影響もあって子供のころからミステリー小説好きでしたが、そのうちいわゆる謎ときに飽き足らなくなって、ハードボイルド系のミステリーを読むようになりました。
入り口はレイモンド・チャンドラー(大いなる眠り)のフィリップ・マーロウものでしたが、ミステリー書評家のアンソニー・バウチャーが名付けたという「ハメット、チャンドラー、マクドナルドスクール」にのっかり、ダシール・ハメット(マルタの鷹)も本作の原作者であるロス・マクドナルド(さむけ)も読み進みました。
ご多分に漏れず、チャンドラーのハードボイルドになり切れない甘さのようなものが好きでしたが、ミステリー小説としてはマクドナルドが優れたものを書いていたように思います。
そのロス・マクドナルド(通称ロス・マク)が看板キャラクターであるリュウ(ルウとも)・アーチャーを最初に登場させたのが「動く標的」(The Moving Target)で、本作はそのかなり忠実な映画化。なのですがなぜか(著作権の関係らしいです)主人公の名ををルウ・ハーパーに変え、それがそのまま映画のタイトルになっています。
で中身を観てみると、複雑なプロットとサスペンスフルなアクションをジャック・スマイト監督がテンポよく演出しているのも得点高いですが、ポール・ニューマン演ずる主人公ハーパーの反骨・不敵・不屈のキャラクターが際立って痛快なので、タイトルを主人公の名にした意味が完全に腑に落ちます。
一方、次々と登場し複雑な関係性により話をややこしくする怪しげな人物たちはオールスターキャストで、ニューマンのほか、ローレン・バコール(脱出)、ロバート・ワグナー(TV:スパイのライセンス)、ジャネット・リー(サイコ)、ロバート・ウェバー(殺しのテクニック)、シェリー・ウィンタース(落ち目の女優役!ポセイドン・アドベンチャー)、ジュリー・ハリス(エデンの東)などが、それぞれ得意の持ち味で映画ファンの目を楽しませてくれます。
スピーディな展開を可能にするハーパーの活躍は若干運に頼っているきらいがありますが、最近のヒーロー・サスペンスにみられる腕っぷしに頼りがちなキャラにはないリアルな人間性を、大げさにならず(いわゆる等身大)に描いていて好感が持てます。
といってもお約束の銃撃戦やカーチェイスといったアクションも取り揃え、それらもまた今時希少になったリアルな演出・演技で楽しめる小気味よい作品です。