【ネタバレ】マッケンナの黄金 Mackenna's Gold (1969) | 映画の楽しさ2300通り

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それなりに名の通った西部劇なのに見逃していました。と言っても理由がないわけではありません。主役のグレゴリー・ペックに特に思い入れがない(相手役のオマー・シャリフもしかり)のと、西部劇として評価が高くもない、ということから、敢えて追っかけていなかったということです。

一方、西部劇のジャンルに属する限りは観ておきたい、という気持ちもあり、とうとう観ることに。で予想されていたことですが、西部劇というよりはアメリカ西部に舞台を借りたトレジャー・ハントの話でした。
宝(ここでは金鉱)を追う人々の葛藤や裏切りに見られる人間の欲深さ、醜さ、くだらなさを主要なテーマとしたことは興味深く、「ナバロンの要塞」のペックが主演ということもあってアリステア・マクリーンの小説の映画化のような雰囲気もありましたが(原作はヘック・アレン)、そのわりには掘り下げが浅く、人間関係からくるサスペンスはあまり感じられず。なぜ実在する金鉱を「ない」とあれほど言い張ったのかを含め、ペックのキャラクターがよくわからない(これもマクリーンっぽい)のと、多分彼の演技が今一つなのでか、あるいはどうしても自分と相性が合わないのでしょう。自分にとっては昔ペック、今フォード(ジョンではなくハリソンです)というところでしょうか。
父を殺されたり、コロラド(オマー・シャリフ、今はオマル・シャリーフと表記するようです)に乱暴されたり(それらしい描写あり)、嫉妬から殺されかけたりしたインガ(カミラ・スパーヴ)が、それでも逃げるより金を手に入れたいとマッケンナ(ペック)を説得しようとするシーンにゾッとさせられたのはよかったですが。

で最後はお決まりのカタストロフ。どうしてこうなってしまうのかにもあまり説得力はありませんが、西部の風景を徹底活用したスペクタクルにしようとしたのは、当時一世を風靡したマカロニへの対抗もあったのでしょうか。J・リー・トンプソン監督の演出はパノラミックな雄大さと手持ちカメラによるスピード感を強調して、なかなかの迫力でしたが、やはり人を描くのが得意な監督とは思えません(そう言えば前出「ナバロン」も彼の演出でした)。
クライマックスからラストの落ちに至る辺りは、砂漠の光景もあって「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」を思い起こさせましたが、その点はさすがにこちらが大先輩。あちらが真似たと言っても良さそうですが、ヒロインを含めた俳優の魅力の点では「ハムナプトラ」の勝ち。インフレを考慮しなければギャラはこちらの方がずっと高そうですけど。

ギャラが高いと言えば、結構そのような著名俳優が中盤に大挙して登場し、あっという間に殺されていなくなるのも面白い趣向。ヴァラエティ番組で出演者がそれぞれ存在を主張するような趣で面白かったですが、役柄上得をしたのはイーライ・ウォーラック(エリ・ワラックとも)、サングラスのせいでよくわからなかったのがエドワード・G・ロビンソンでした。当時のファンならすぐわかったんでしょうけどね。
突っ込みどころ満載とは言え、CGもない当時としてはよく頑張ったということ、好きでないとは言え、ペック始め役者たちの西部劇らしさはさすがに板についていたことは、評価できると思います。