麦の穂を揺らす風 The Wind That Shakes the Barley ☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

人間の絶対数が少なかった大昔は知らず、文明以降の人間の歴史は暴力による抑圧と自由を求める闘いの歴史だったのでしょう。そしてけして学ばない人間の愚かしさも改めて感じました。
といってもこの作品の主張がそうだという意味ではありません。ありませんが、人間社会で自分が生きるスタンスを改めて考えさせる映画だと思いました。

それほどに真面目で律義なストーリーであり演出です。ケン・ローチ監督の作品はこれまで観たこともなく、恥ずかしいことに名前さえ認識していなかったのですが、非常に好感を持ちました。最近よく観る韓国映画は情が持ち味で、南北関係を真面目に描いた作品でも情に関するエピソードや描写を前面に出しますが、この作品にはそれはありません。それでも人間が観る人間の話ですから、登場人物たちの感情・心情がひしひしと伝わって来ます。正直、観ていて何度も泣きそうになりました。が、それはこらえられる(こらえたい)涙なのでいわゆる「泣ける映画」ではないのです。

アイルランド戦争や内戦、紛争を描いた映画は多いですが、これからは東アジアや中東でのそれらについて語る作品が数多く観られることでしょう。それらを観て考え、想いを形にすることで、やがて同様のテーマの作品が作られなくなる(作る必要がなくなる)日が来ることを願ってやみません。