双葉十三郎氏のこと | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

映画評論家、双葉十三郎氏が亡くなりました。新聞で記事を読んだのはつい先日ですが、亡くなったのは先月のことで、99才だったそうです。

氏の評論が好きでした。人柄であろうユーモアと、ジャンルを問わずにとにかく沢山の映画を観られた豊富な知識に裏打ちされた「ぼくの採点表」は、雑誌「スクリーン」中の白眉でした。淀川長治氏と共著の「写真で見る外国映画の100年」5巻はボロボロになるまで読みましたが、淀川氏が亡くなってシリーズも終わりと思っていたら数年前に双葉氏監修でさらに2巻が追加された復刻版を発見。早速全巻購入し、宝物のひとつになっています。

文学や音楽への造詣も深く(チャンドラーの「大いなる眠り」を最初に翻訳されています)、堅苦しさのない楽しい評論が特徴だったと思いますが、それでいてロードショウのパンフレットの記事でも、提灯記事にはほど遠い他に抜きんでた仕事をされました。「ダーティハリー」公開時パンフの記事は山田宏一氏も絶賛された傑作です。

知識、感性、文才の高さはもちろんでしたが、一番強く感じた(そして好きだった)のは映画への愛でした。作品を悪く言う時でも子供を叱るような情を感じたものです。作品の好みが違い評価には賛同できないときでも常に参考になる、そういう人でした。残念ながら映画を仕事にはしていませんが、ブログでも氏のように文章を書きたいと思っています。合掌。