前回のモツレクが割と好評?だったので、今回は大胆不敵にもブルックナーの8番について書いてみたいと思います。まずは、手持ちのCDを概観。

 

 

 

枚数は14枚。指揮者はフルトヴェングラーやチェリビダッケ、カラヤン等ビッグネームが並びます。オケも全て一流。

 

版はハース版が多いですね。国際ブルックナー協会はノーヴァク盤(新全集)を本流としていますが、多くの指揮者は曲の所々をカットしているノーヴァク版よりハース版(旧全集)を好んで使っていると聞いた事があります(本当のところは良くわかりませんが)。同協会の会長をつとめたヨッフムは、さすがにノーヴァク版を使っていますね。

 

録音は70年代と90年代が多め。一番古いのがフルトヴェングラーで新しいのがティーレマンになりますが、2000年以降のCDがティーレマンだけなのが少々寂しく感じます。

 

録音時間で特筆すべきは、チェリビダッケの2枚でしょう。第1、第2楽章も十分長いですが、第3、第4楽章に至っては驚異の30分オーバー。他に比べて頭抜けています。対照的に短いのはシューリヒトやハイティンク、インバルですが、私はヴァントに傾倒しているせいか基本的にはインテンポのもの、端正な演奏に食指が動きがちです。

 

さて、何だかんだと書き連ねてきましたが、この辺でお気に入りの名盤ベスト5を勝手にご紹介したいと思います。

 

 

1、チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル

 

 

指揮:セルジュ・チェリビダッケ
楽団:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
版:不明
録音:1994年
 

巷では「幻のリスボン・ライヴ」と呼ばれているチェリビダッケの名盤です。第1楽章の重厚なコーダ、第2楽章の弦の優美な旋律、第3楽章の雄大なアダージョ、そして第4楽章の鬼気迫るフィナーレ、どれをとっても素晴らしいです。個人的に、どっしり存在感のあるブル8を聴きたい時は、これ一択。1990年の東京ライヴも悪くはないのですが、金管の鳴りがイマイチで、全体的に満足な出来にも関わらず自然と聴かなくなってしまいました。



2、ベーム/ウィーン・フィル

 

 

指揮:カール・ベーム
楽団:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
版:ノーヴァク
録音:1976年
 

ベームの堅実な解釈にウィーン・フィルの卓越した技術が融合した、紛うことなき名演。特に第2楽章の正鵠を射た演奏と、第3楽章のハープのアルペジオの流麗な音色には舌を巻きます。ベームは淡々として面白みに欠けるという方も時折見かけますが、ブルックナーの静謐な美しさが上手く表現されていて私は好きです。

 


3、クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル

 

 

指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
楽団:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
版:改訂
録音:1963年
 

ブル8の名盤と言えば、これですよね。宇野功芳氏も「どれほど賞賛してもしすぎることはない」「永遠の名盤」などと太鼓判を押している名盤中の名盤です。今聴くと無骨で、正直耳あたりの良い演奏ではないのですが、よくよく聴いてみると繊細なニュアンスや儚さ、奥深さが感じられ、大変興味深い演奏になっています。特にスケルツォ。ワインで言えばシャンボール・ミュジニーのような妖艶さや、憂いのある旋律が上手く表現されています。

 


4、ヴァント/ケルン放送響

 

 

指揮:ギュンター・ヴァント
楽団:ケルン放送交響楽団
版:ハース
録音:1979年
 

著名なブルックナー指揮者といえば、古くはフルトヴェングラーやヨッフム、クナッパーツブッシュなど枚挙に暇がありませんが、私の中のベンチマークは今も昔もヴァントです。このケルン放送響の音源も穏健な響きがあって好ましいのですが・・・心を鬼にして難点を言わせて貰うとw、金管が冴えません。ここぞという時の鳴りが十分じゃないし、ところどころ音が割れちゃってるのも気になります。ここがもう少ししっかりしていれば、クナを抜いて3位入賞でした。



5、シノーポリ/シュターツカペレ

 

 

指揮:ジュゼッペ・シノーポリ
楽団:シュターツカペレ・ドレスデン
版:ノーヴァク
録音:1994年

 

54歳という若さで亡くなられたシノーポリ。アバドやムーティには劣りますが、イタリアを代表する指揮者の1人です。シノーポリならマーラー派という方も多くおられると思いますが、私は根っからのブルックナー派で、とりわけ8番が大のお気に入りです。若々しいキレのあるサウンドが特徴的ですが、シューリヒトのようにセカセカしておらずディテールがしっかりしていて好感が持てます。第3楽章のビロードのような美しい音色など蠱惑的で素晴らしいです。