沖縄県は、第二次世界大戦後はアメリカの統治下にありました。1972年5月の本土復帰まで、煙草の製造販売は民営煙草会社が請け負っていました。四社が設立されましたが一社は半年程度で撤退し、三社が復帰まで販売にしのぎを削っていました。

 

その内の一社である【琉球煙草株式会社】は最も規模が大きく、琉球煙草の第一号製品を発売しています。それが1955年2月に発売された≪おとひめ≫です。広く宣伝を行い、その上≪島産煙草≫の第一号製品と言う事から、島内の評判も良くて販売は好調だったようです。

 

【琉球煙草株式会社】は、1951年11月に設立されています。この時代、紙巻き煙草は輸入煙草の天下ですので、細々と刻み煙草を製造していました。≪すみれ≫≪すすき≫≪しらぎく≫≪すいせん≫

≪もみじ≫などの銘柄が知られています。5種類の銘柄の刻み煙草の中で、≪しらぎく≫のみが長期間販売され、他の4銘柄のパッケージは幻となっています。

 

今回はその≪しらぎく≫と≪おとひめ≫の新聞広告を、代表的なパッケージと併せてご紹介します。

 

 

 

                    しらぎく

 

1952年10月4日に発売されました。長期間の販売で、社名の活字に変化が見られます。

1963年以降は、日本専売公社へも製品を輸出しています。

 

 

まだ自社で用意した封緘紙を使用している時代です。そうして後期には琉球政府の封緘紙が用意されますので、このパッケージは中期の製品と言えます。初期は社名の字体が異なります。

 

 

            宮古経済新報  1953年1月27日 掲載

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                     おとひめ

 

1955年2月~1960年まで発売されています。琉球煙草第一号として、歴史に残る製品です。

 

 

5年間の製造期間中、いくつかの変化が見られます。最後はU字2型のパッケージになり、証紙が貼付されますが、こちらはその前の製品で、中期と言えそうです。前期、中期、後期の3種類に分類しています。

 

 

         沖縄タイムス         1955年2月3日 掲載

 

          第一号の島産煙草と言う事で、新聞記事になりました

 

 

 

 

 

 

 

          沖縄タイムス      1955年1月18日 掲載

 

                  発売前の新聞広告です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          沖縄タイムス      1955年1月24日 掲載

 

        こちらも上の広告の翌週に掲載された、発売前の新聞広告です

 

 

 

 

 

 

 

 

         話題 第二号        1955年8月10日 発行

 

             ”話題”という雑誌に掲載された広告です。

 

 

    日本専売公社】からの輸入煙草≪チェリー≫の広告と並んで掲載されています。

 

 

 

 

 

≪おとひめ≫は大々的に宣伝していた製品で、琉球で最初となる3本入りの【見本煙草】も用意されました。民営会社は島内各地に小売店を抱えています。三社ともいくつかの銘柄の【見本煙草】を用意していますが、それぞれの特約販売店に配布していたのでしょう。

 

【見本煙草】のパッケージはいずれも少ないのですが、中でも≪おとひめ≫は見かける事がなく貴重です。

 

 

       今回ご紹介した≪おとひめ≫と同じ納税ゴム印が押印されています。

 

三社がそれぞれいくつかの銘柄に用意していた【見本煙草】は、いずれも煙草会社が製造しているようですが、こちらの【見本煙草】は販売代理店の【湧川商会】が用意していたのかもしれません。

 

販売代理店の【湧川商会】はかつては輸入煙草の代理店でした。琉球島内が輸入煙草で賑わっていた1950年代、アメリカ煙草≪シーソー≫の輸入販売の新聞広告が1954年に掲載されています。

 

 

 

 

 

 

 

≪おとひめ≫は1955年2月の発売ですが、実はこの前年の1954年5月に島内で製造された

銘柄があるのです。設立から半年程度で撤退してしまった会社【琉球香港煙草株式会社】の販売した

≪チャンピオン≫です。 【パッケージデザインは、当ブログ≪琉球香港煙草株式会社≫のページを

ご参照ください】

 

 

 

外資系の会社で、葉煙草は全て香港から輸入していて、琉球では巻き上げと箱詰めを行っていたようです。その為かどうか、輸入煙草としての扱いで、琉球政府の輸入煙草用の専用証紙が貼付されています。琉球煙草とは認められていないようです。

 

この会社は、中国を拠点としていたイギリス資本の【香港煙草】が沖縄に進出したのですが、外資系の会社ゆえに許認可の問題、外国産たばこへの高い税率などで撤退してしまいます。

 

私を息子のようにかわいがってくださり、琉球煙草のパッケージをほとんど頂き大変お世話になった方は、「島産煙草ではないが、≪チャンピオン≫は琉球で最初に製造された煙草として、もっと注目されても良いのだが…」 と話していらっしゃいました。

 

 

 

 

 

以前、【琉球煙草株式会社】の初期銘柄のページで、パッケージ変化の詳細をご紹介していますので、宜しかったらご参照ください。≪しらぎく≫≪おとひめ≫の変化をご紹介しています。