「永遠のイノセントな笑顔に寄せる感謝」 | アリス高崎障がい者就労継続支援

アリス高崎障がい者就労継続支援

群馬県高崎市にある障がい者就労支援施設です。
心の病の方が主に利用しています。
安心感と楽しさと仲間同士のつながりの中での回復を一緒に目指していける、そんな場作りを心がけています。
悩みをゆっくり話せる個人相談の時間も大切にしています

 

 

 

 

「永遠のイノセントな笑顔に寄せる感謝」


アリス高崎
ブログ担当 N です


( 僕の1番大切と言ってもいいくらいな大切な気持ちを書いてみます。

…でも実はこれ、ちょっとカミングアウト的なお話なんです…秘密の告白の話なんです…
おそらく他の人にとってはどうでもいいような内容のことなのですが、
僕にとっては大切なことを思い切って書いてみようと思って文章にしてみました…

ちょっと長めですけど…もしよろしかったら…読んでみてください )



唐突な話なのですが、

僕には、もうずいぶん長い年月の間、一緒に暮らしている

『ぬいぐるみ』

がいます。


最初に出会ったのはもう20年以上前のことです。

東京銀座にある、ぬいぐるみの専門店のショールームの前をたまたま僕が通り掛かった時、
そのショールームのガラスケースの中には、たくさんのぬいぐるみが飾られていたのですけれども、

そのたくさんのぬいぐるみの笑顔に包まれるようにして、
中央の〈主役〉の座で、
にっこりと笑っている

『おさるのぬいぐるみ』

に僕は出会いました。



僕はそのおさるの笑顔を見たとき心を射抜かれました。



それはなぜか…

それはなぜか…ということの理由をここに書き記しますと…


僕は、ずっと昔の若き20代の頃より、いつも一人暮らしの自分の部屋に、幼き頃の自分の写真を

フォトフレームに入れて飾っていました。

それはおそらく僕が3歳くらいの頃の写真だと思うのですけれども、

 

ある時、僕は実家に帰った時、
自分の幼き頃のその写真を見つけて

自分で言うのもなんなんですけど…

あんまりにも可愛くて、びっくりしてしまったんです


そして思ったんです、

「このあんまりにも可愛いすぎるほどの無邪気な笑顔が僕のこころの原点なんだなー」

って。

そう思ったんです。

深い感慨を込めてそう感じたんです。


そして僕は僕自身の心がつくられてゆくその源(みなもと)の笑顔に、
いつでも今の自分の心が戻れるようにと思って、

その写真を実家から持って帰ってきて、
一人暮らしの部屋の中に、
フォトフレームを買ってきて、きちんとそこにその幼き頃の僕の写真を飾ったんです。



その当時、僕は僕自身のことがあまり好きになれなかったです…

自分自身に自信が持てなかったり…

そんな部分がずいぶんあったんですけど…

そんなわけで落ち込むことも結構あったんですけど…

そういう時、いつもその3歳くらいの自分自身の幼き頃の写真を見ていました。


僕自身のその時の、

自信が持てなかったり…
自分のことを好きになれなかったり…
落ち込んじゃったりしている…

この自分の心が、

どんなに無垢な無邪気な笑顔から育ってきたのかということを

源流を目指して泳いでゆく魚のような想いでその写真をいつも見つめていました。





それでさっきの話なんですけど…

さっきの銀座のぬいぐるみ専門店のショールームの中の
『おさるのぬいぐるみ』
に出会った時の話です。


僕がなぜそのぬいぐるみに心を射抜かれたかという、そのわけなんですけど、

そのおさるさんの笑顔が

部屋に飾ってある写真に映し出されている、幼き2〜3歳の頃の僕の笑顔とそっくりだったんです

(つまり幼き頃の僕はおさるにそっくりだったということになるんですけど、)




僕は昔から

「一目惚れってほんとにあるのかなぁ…?」

などと夢もカケラもないようなことをホントに思うタイプの人間なんです。

つまりそれぐらい、あまり人をパッと見た時の瞬間で判断しないタイプなんです


でも間違いなく、そのおさるさんに出会った時、
僕は一目惚れしました。



この僕の奥に潜む無垢なるイノセントな心の源(みなもと)である、
あの幼き日の僕の笑顔の写真そっくりな笑顔を持つ、

このおさるのぬいぐるみ

僕が買わなかったら…誰が買うと言うのだろう…?


と言うより、


このおさるのぬいぐるみは僕以外の人に絶対買わせてはいけない!!


強くそう思ったのです。



お店の人に

「あのぅ……あのショーケースの中に入っている…中央に座っている 

『おさるのぬいぐるみ』 

なんですけど…あれ…売ってもらえないでしょうか…?」


僕はドギマギしながら店員さんに尋ねました


「あーいいですよー」

ショーケースの中央で主役のアイドルのように飾られていたので、
 『あれは売れません』 と言われるかと思ったら、あっけなく了承してもらえました。


ぬいぐるみとしては…結構な高額な値段だったけど…そこに関しては何よりも出し惜しみしてはいけないと思って、

すぐに買って、
おうちに一緒に帰りました。




そしてそれから…おさるさんは僕の部屋で一緒に暮らす住人となりました。


銀座のショールームの中央で、
たくさんのぬいぐるみ達に囲まれるようにして座っていた、
アイドルのようだったおさるさんは

それからは、アイドルでもなんでもなくなって、僕の部屋で暮らすなんでもない一人の住人となったのです。


幾度かの引越しを繰り返しましたが、そのたびごとに一緒に引っ越しについてきてくれました。



ぬいぐるみといっても、結構大きめなぬいぐるみなので、
抱きしめると、ちょうど小さな子供を抱きしめているような感じになります。


まるで、
イノセント(無垢なるもの)
の源である僕の笑顔と、幼き僕自身を抱っこしてあげているみたいなそんな感じになります。



僕はそのぬいぐるみの笑顔と存在にずいぶん助けられてきました。






…しかし僕はここで正直なことを告白しないといけません…

…このことをここに書き記し始めた以上、書かないわけにはいきません…


…それはひどいことです…



僕はその後、心を病みました


そして僕はあらゆることがどうでもよくなっていってしまいました…

なげやりになっていってしまいました…


ある時、部屋を片付けている時、ちょっとそのぬいぐるみを押し入れの中にしまったのです…
そうして…そのままにしてしまったのです…


どうかしていたのです…


それきりぬいぐるみは数年間にわたって、押し入れから出される事はありませんでした…


そしてまた…
僕が…幼き頃の自分の写真を見つめることもなくなりました…


その時僕の中にあったものは、
その時存在していた苦しさと混乱だけでした…

他のものが入ってくる余裕がもう何もなくなってしまっていたのです…




それから幾年もの年月が過ぎ…

僕の心の症状が、幾分か、回復の兆しを見せ始めた頃、

なんでだか知らないけど、実家に住むうちの母親が、
編み物の趣味もないくせに、たまたま見ていたNHKの番組で、

『誰でも作れる簡単なぬいぐるみの作り方』

というのをやっていたそうで

「あーこれなら私にもできるな、」

と思ったらしく、

何の気まぐれか、家にあった毛糸で、突然その
『誰でも作れるぬいぐるみ』
を作ってみたそうです。

それは

『子グマのぬいぐるみ』

でした。


母親は、作ってみたらもう気が済んだらしく、
そのぬいぐるみを家に置いておいてもしょうがないと思ったらしく

「お前にあげるよ、」

と言って、ある時手渡されました。


「…そんな…勝手に作ったのに、手渡されたって…どうしろっていうのさ…」


と、僕は思いっきりの苦笑いを込めながらも、別に断る理由もなかったので、そのぬいぐるみを家に持って帰りました。


持って帰ってきた
『子グマのぬいぐるみ』
は、
ぬいぐるみを作ったことのないうちの母親が作れたものだから
いたって簡素なものでした。


特に何の気なしに僕の部屋の隅に置かれていました。


そのクマさんは小さいんだけど、

なんかやけに生意気そうで、

またその生意気そうな感じがとっても可愛い笑顔をしていました。



そして僕はある時、はっと思いました


「あっ、押し入れから
『おさるさん』

を出してあげなくちゃ、」



僕が病んでいた長い年月の間、
僕の心に光も音も届かなくなっていた間、

このおさるさんも真っ暗闇の中で、
光も音も届かない中で暮らしていたのです




ごめんなさい…

本当にごめんなさい…




でも、おさるの笑顔は何も変わっていませんでした



そしておさるさんとクマさんは初めて顔を合わせました。


楽しそうに会話を始めているようでした。


ずいぶん気が合うようです。


もう一人ぼっちではなくなりました。


それからニ人はいつも一緒にいます。

ずいぶん仲良しになりました。



全く幼き純粋無垢のおさるさんの笑顔と

ちょっぴり生意気そうなんだけど、なんとも可愛げのあるクマさんの笑顔と

ニ人にとって、お互いは、
互いになくてはならない存在になったようです。


つまりそれは
僕にとって、ニ人はなくてはならない存在になったということです。



ぬいぐるみの笑顔とは不思議なものです。

どんな時でも変わらぬ笑顔を見せてくれます。
(当たり前なんだけど)


僕がどんなに落ち込んでいても
イライラしていても

心が疲れて泣きそうになっていたとしても

ニ人は変わらぬ笑顔で僕を迎えてくれます。


迎え入れてくれるその場所は

『僕の心の笑顔のふるさと』
です。

幼き頃の僕の笑顔が最初に生まれた源(みなもと)の場所です。




くまさんとおさるさんのニ人が出会って、仲良くなって、一緒に暮らすようになってから、もう10年以上経ちます。


いつもいつも

同じ笑顔で、僕と一緒にいてくれています。



少しずつ病気が良くなってゆく時間を共に過ごしてくれました。


アリスで働きはじめてから
疲れたり、落ち込んだりすることもたくさんあって、

そんな時も、一緒に時を過ごしてくれました。


同じイノセントな笑顔で。




そして、2人の存在は僕を慰めてきてくれただけではありません。

僕の心の中に同時に大切な何かを育ててきてくれたのです。

それは何かというと


『誰かを大切に想う気持ち』

です。


それは、常に変わらぬイノセントな笑顔を贈り続けてくれる二人に対して感じ続けた、
『愛おしさ』
の中から生まれてきたものです。


それは常に変わらぬニ人の笑顔が

僕の心の中に育ててくれた贈り物です。



そして僕は知っているのです。

二人に対して募らせてきた 愛おしさ』 の想いは
実はそれは僕自身に対して募らせてきた 愛おしさ であるということを。


それは、
僕の心の奥に生き続ける、
あのおさるさんにそっくりだった3歳児の僕自身の笑顔に向けられた

『愛おしさ』 であるということを。



僕は二人を抱きしめ、愛おしむことによって
僕自身の中の幼き3歳児の僕自身を、抱きしめ、愛しみ続けてきたのです。


僕の中の、幼き頃の源の笑顔は、
絶対に変わることのないぬいぐるみの笑顔に、
鏡のようにいつも映し出され、

それを愛おしみ抱きしめ続けることによって、

大切なものを大切なものとしてそのままにしていきながら、
「新しい心」を育てていくことができたのです。

『誰かを大切に想う心』 です。


僕は、もしこのニ人の笑顔がなかったら、僕自身の心の中に
『誰かを大切に想う心』
をこんなにも育てられなかったと思うのです。


そうしたら、僕という今の人間はいなかったと思うのです。


そしたら今やっているようなアリスでの仕事の仕方はできなかったなぁと思います。

今のような人との関わり方はできなかったなぁと思います。




今もこの文章を書いている横で、二人は楽しそうにおしゃべりをしています

決して変わることのない無垢なる笑顔で。




僕は深く深く感謝を伝えたいのです

おさるさんとくまさんの仲良しなニ人に。




永遠のイノセントな笑顔に向けて、

思いっきりの愛情を込めて、

感謝の心を贈りたいと思うのです