「Spring」恩田陸 | アリスカフェへようこそ3

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 恩田陸の新作「spring」を読みました。恩田陸の作品は、ピアノコンクールをテーマに書いた「蜜蜂と遠雷」、そのスピンオフ作「祝祭と予感」を読んで以来です。本作のテーマはバレエ。生まれ持って「バレエ」のギフトを与えられた萬春(よろずはる)というダンサーの物語です。バレエの小説で、男子が主人公というのも珍しいかも。

 

ですが、上から目線で言わせてもらうと、編集者の方から「バレエ」をテーマに本を書かないかという話があり、何年もバレエを研究し、舞台を観て勉強して書いた作品なので、詳しく書いているな~とは思うのですが、心の中に何か落ちて来るものはありませんでした。

 

4人の語り手がそれぞれ各章毎に変わっていく仕組みです。

第1章「跳ねる」 ハルのバレエ仲間深津ジュンの眼を通して語られる。

第2章「芽吹く」 ハルの叔父稔の視点で8歳から~15歳で留学するまで。

第3章「湧き出す」幼馴染でバレエ仲間だった七瀬から観た留学中のハルの姿。

第4章「春になる」バレエダンサーとしても、振付師としても成長していくハル。

         この章は、ハル自身の言葉で 新作バレエの公演までを描く。

 

バレエ物と言えば、女の子が主人公で、クラシックバレエの世界でのライバルの切磋琢磨する姿が描かれると相場が決まっていますが、本作はいい意味で期待を裏切られます。ハルの活躍は、主にコンテンポラリーダンスで、ダンサーであり、コレオグラフィー(振付師)としても活躍の場を広げて姿を描いています。

 

最終章は、ハル自身の眼で過去の自分の回想、現在の「春の祭典」新作公演の準備、日本への凱旋帰国ガラ公演から未来への展望で終わっています。ですが、怪我をして挫折したりとか、自分の才能に絶望したりとか、そう言ったハルの苦悩が描かれていないせいか、何か物足りなさを感じているうちに、物語は終わってしまったという印象でした。私のバレエの知識がほぼ皆無なので、辛口感想になってしまいました。