ここは、どこだろう。
私は森のなかの一軒家に
ふらふらと
降下していきました。
「アリスちゃん?」
(ナナシ...)
そうか、ここは三人で
最後にケーキを食べた場所だ。
苺凛香
「さあアリス、たべてごらん」
(のみこめないの...)
「こうすれば、入っていくよ」
(...ゴクン、ありがとう)
「アリス...、
いっしょにたべようね」
(...ゴクン、ありがとう)
「マリコお姉さん、
ちょっと、ちょっと...」
「はい、はい」
「お花のお返しをしたいの、
どれがいいと思う?」
「そうですね...」
「そんなにたくさんですか!」
「そう、だからサービスして♪」
「いいそうですよ♪」
「...写真も送ろう」
「どれがいいかな...」
そこにはアリスがいました...
疾風のように
時を駆け抜けた犬。
彼女は一滴の光りを求めて
阿蘇を縦断し...
ボールいっぱいの
あか牛から
山の岩清水まで...
阿蘇を食べ尽くしました。
そんな犬を友達は
自由犬と呼びました。
あれほどの犬に
二度と会えるはずもなく...
あんなに楽しい旅も
これからはもうこないし...
行きたいとも思わない。
すごい犬に出会って、
いい旅をしすぎたようです。
だから、
晩年は淋しいに決まっている。
あとは、
あの楽しき日々を...
少しずつ少しずつ思い出しては...
なつかしみ、
老いていくしかないのだろう。