ごちそうしたいそうですよ。
パパとママに
元気になってもらいたいって...」

2月最終週は平穏に
流れていきました。
厳しい寒さもゆるみ
私が覚醒する午後は、
かなりあたたかくなっています。
死者になって
初めて迎える春が
近づいていました。

「本当は私より、
パパの方がまいってます...」

パパ
「アリスが天井にいる...」

「降りておいで...
いっしょにたべよう」

(...うん♪)

空を舞う私の視界に、
森を抜ける小道と
車が映りました。

(ジュジュハウスに
いくつもりだ...
ジュジュくんは?)

ジクザグを描き、
三日月に上昇し...

ジェットコースターのように
ひねりを加え、
急降下してみる。

(ジュジュくん、聞こえる?)

「...アリスちゃん、
アリスちゃんなの?」

「そう、アリスは死んじゃった...
最後まで闘って死んだの」

「ジュジュも
最後まで生き抜くんだ」

「おめでとうはいわないよ」

かあさん
「愛してるは、いう。
これは...アリスちゃんが
最後にたべたケーキよ」

「...アリスちゃんの匂いがする」

「...チッ、まるで無視かよ」

「ぼくの名前は、シュシュ♪
はじめまして」

「よろしくね♪」
「オウ!」

「ジュジュ、負けるな」
「シュシュ、強いな」

私は幼い男の子を
ほめてやりたかった。
口をおおきく広げ、
左右に頭を振りながら、
誇らしげにロープをくわえている。
見あげるとパパもめずらしく
笑顔を見せていた。

朝、目が覚めて、
変らずにそのキラキラした瞳で
ぼくを見て喜ぶ彼女を見ると、
よし、きょうもいくか!
そういう気分になったものです。
2010年6月
