聞こえた? | 続・阿蘇の国のアリス


「アリスが死んだこと、
みんなにバレちゃったね」

(うん...ってか、
パパが書いたじゃん)


パパの胸に抱かれたら...


旅の始まりです。


...きみは
ぼくの胸で眠るといい。

ぼくは阿蘇を旅して、
きみにたくさんの景色を
見せてあげよう。


私がパパの胸に抱かれて
最初にいったところは、
近くの天文台でした。


「アリス号だ」


おともだちのお花を
とりにいきました。


...思いだした。


ここは、ママとパパが
結婚式を挙げた場所。


「アリス、思いだした?」

(うん)


「アリスちゃんは
どこにいった?」


野良犬のクマは、
私が阿蘇の国にきたときからの
唯一のおともだちです。

三本足で自由に生き、
いくつもの冬を越えました。

「クン、クン、天文台だな」


「ごめんください、
お花が届いていませんか?」


「アリスちゃん...
死んじゃったんですってね。
みんなが噂してますよ」


「苺凛菓のマリコお姉さんも、
あそぷろさんも泣いていた...
だっこさんも知っていた」


「あそぷろさん、
わざわざ
ケーキを届けてくれて、
ありがとう」






(あとで、たべるね♪)


おうちに帰ると、
また、お花が届きました。

「アリス、わかる?
ローリィママさんよ」




(ママさんも、
ローリィくんも、
体調がすぐれないのに、
私とママの絵を
描いてくれたんだよね。
おふたり、
早く元気になってね...
ビビディバビディブー、
おまじない)


「これは、
るーさんのお友達の、
モコたんかーさんからよ」


(さっき電話で、
私たちの声が聞こえるって、
いってた...
バラも、魔法を使って
枯れないようにしたらしいよ)


「ラブちゃんのお友達、
qоо mamaさんも
きてくれたよ」

(qооちゃんを亡くして一年、
譲渡会でファニーちゃんを
むかえたやさしい人...)


「はい、これは、みこさん」


(私とバースくんを
いつも陰で応援してくれた
見守り人のみこさん)


「皆さんのお心遣い
うれしく存じました。
お花屋さんになる夢が
かないました」


(今日が、
お花でいっぱいでよかった...)

「どうして、アリス?」


(今日はパパの
お誕生日でしょう。

私からは何もして
あげられなかったから、
お誕生日前に死んで、
パパにお花をあげられて
よかったと思う。

パパは男のくせに
お花が大好きなんだもんね。

これはパパと私のお花。

これからは
すべてをわたしたち
ふたりでするのよ。

パパの最後の
心臓のひと打ちが
とまるまで...

それがパパとすごした
7歳と10ヵ月の結論)


その日の夜。

「アリス、
そこにいるでしょう?
何してるの」

(音、聞こえた?)

「聞こえたよ、
ポテトチップス
たべてるでしょう?」

神や魂など、信じられない。
私たちは、目に見えるもの、
証明できるものしか、
信じない。

しかし、
目に見えるものしか
信じないという彼らの目は、
じつは、目に見えるものすら、
見てはいない。