「アリスちゃん、今日は歩けるかな...」
(2歩あるけたよ♪)
「うん、それでいい。ありがとう」
(シャネール)
「アリスちゃん、
やっぱり今日は病院にいこうか?
正月休みがあるからね」
(うそ、私、死にそうなんでしょう?)
冬になると、
南阿蘇の空は一枚の
おおきな青ガラスになります。
濁りも傷も迷いもない、
アリス、きみのようにクリアな空です。
底の知れない青さを見あげていると、
きみの寝顔を見るときのように、
なぜかぼくは泣きたくなります。
「ううん、ちがうよ。
アリスは死なないよ。
ぼくたちといっしょに新年を迎えるんだ」
(ほんと?)
「そうよ、アリス。
そのためにも今日は病院にいくの!」
(うん♪)
29日、正午。
「この病院で一番長く
通院しいてるアリスちゃんが、
今年最後の患者さんになりました...」
「アリスちゃん、
本当によくがんばったね。
こんなに長くがんばってくれるなんて、
夢でも見ているようだよ...」
「今、MRIを撮ると、
脳腫瘍はおおきく
なっているんだろうけど、
延髄も曲がりながら、
脳腫瘍から逃げてるんだろうね...」
「アリスちゃんが
生きたくてそうしているのかな?
それとも、
神さまがそうしてるのかな?」
(先生、ありがとう...)
「クリスマスケーキ、
おいしかったですよ♪」
※苺凛香
(私はいつまで
パパといられるか、わからない。
その時間を買うためなら、
なんでもするよ)
「パパもうれしいよ」
きみの目が
うっすらと涙で赤くなっていました。
自分ももらい泣きしていました。
「パパご褒美ちょうだい♪」
それは、久しぶりにきいた
アリスの声でした。