私自身に関する限り、
世界に神がいないことは
よくわかっていました。
ママが生きている人間の世界には、
人間の願いを素直に叶えてくれる
普通で善良な神が
いるのかもしれないけれど...。
その日の午後、
目を覚ました私は、
ロボットのような動きで
イノシシ林でオシッコをして...
アリスのドッグランの
半分ほど行ったところで
一歩も足を運ぶことが
できなくなりました。
(だめだ、
もうぜんぜん力が残っていない)
(自分はどうなってもいいから、
ママだけは幸せになりますように)
「聞こえる?アリスちゃん...」
「アリスちゃんの番だよ♪」
「うん、聞こえる、先生」
「元気そうだね、
クリスマスはもうだいじょうぶだよ♪」
「また体重が増えてる。
すごいね、アリスちゃん♪
おいしいものをたくさんたべてるんだね」
「お金がかかってたいへんです、中年破産です」
(私の世界にも...)
(神様がいた)
「アリスのご飯を買いに行こうね」
「リラサンタさん、メリークリスマス♪」
「以上3点、
ドッグフード評論家の
ジュジュかあさん、どうでしょうか?」
夜がやってきました。
車のドア脇から、
こちらを覗いている気配がしました。
ママでした。
(私も生きるから、あなたも生きなさい)
声はそういっていました。