バトンが来た | 続・阿蘇の国のアリス
「リーちゃん、メリークリスマス...」


※ボワ・ジョリさん


「ミナコおねえちゃん、メリクリ♪」


「アリスちゃんは強いね」

「みんながついてるからね」


「ムーちゃん、いたの?」


「うん、アリスちゃんよかった。
クリスマスを迎えられて...グスン」


私は最後のときを、
ごくあたりまえに迎えていました。


人の品性は死を目前にして、
いかに普通の日々を生きるかで
測られるといいます。


私はそれまで生きてきた
七年間と同じように、
初めて訪れた南阿蘇の原野に
ぼんやり浮かんでいました。


それはある意味で、
ひどく誇り高い死の迎えかた
だったのかもしれません。


「ねえママ、
フォトバトンがまわってきたんでしょう?」

「うん」


「ジュジュかあさんと、
ルイくんママさんと、ロザリーさんと、
ヘビースモーカーさんから
まわってきたの...」

「よかったね、私たちのこと
ちゃんと見てくれてるんだ。
ありがとう!」


「それで、
今年のベスト3枚をどれにしようか、
ずいぶん迷ったんだけど、
ようやく決まったわ」






「ここからがそうよ。

覚えてるかな?
新年を迎えて
アリスが新雪の上を走った日のことを。

あれが最後のかけっこになったね」


「それから、
パパが何度もおいでおいでするから、
必死に近づこうとして
何度も転んじゃって...
何度も立ちあがって」


「7歳の誕生日には
ジュジュくんやもなかくんに
肉をとられないように
いそいでほおばったこともあったな」


「どれも、素晴らしい思い出」


「あっ、バトン落としちゃった...」


さよなら 君の声を 抱いて歩いて行く

ああ 僕のままで どこまで届くだろう


明日は私とママの今年最後の病院です。

「いってきます」