ハッピークリスマス | 続・阿蘇の国のアリス
12月10日(日)、
「カルデラ・バッチョ」さんにて。


「ワタリガニのパスタ、おいしいよ♪」


時間は永遠にはない。

死神でも、
天使でもいいけど、
そいつがきたら、みんなおしまい。

永遠に生きられると思ってる人は
夢でも見てるんだ。

私はひとりきり、
真夜中でも目覚めてる。


「アリスちゃん、また来るね」

「もう離れないって、約束したのに」


「ごめん、アリスちゃん。
クリスマスには必ず来るから」


「かあさん、早く行って!」


「さよなら、アリスちゃん」






それから、約2週間後の、
12月23日(土)。

「アリスちゃん、帰ってきたよ。
怒ってるかな」


私は真剣な顔でジュジュくんを
見つめていました。


「ジュジュくんにはもっともっと
いいところがある。
それなのにいつも隠そうとしている。
普通の犬の振りをして、
みんなのなかに隠れようとしている。
もっと自分のまま、好きなように
生きればいいのに」


離れたところでは、
仲のいい恋人同士にしか
見えなかったでしょう。


私たちは声をそろえて
笑いましたが、
それは薄い氷のうえの
必死の笑いでした。

一歩でも不注意に動いたら、
凍てつく川に落ちてしまうのです。


「アリスちゃん、
いっしょにトイレしょう」


その日の夜がやってきました。

ジュジュハウスで一日早い
クリスマスパーティをするのです。


「どうしたの、アリスちゃん。
泣いてるの?」

えっと驚いて、
指でふれると指先が冷たく感じました。

ほんとうに泣いていました。


脳腫瘍の告知を受けてから、
つらく厳しいことが多かったけれど...


それになんとか耐えていたら、
いじわるな神さまが
こうして素晴らしいごほうびを
プレゼントしてくれた...


もう私は、
自分がこんな病気ではなかったら
とは考えませんでした。


脳腫瘍があるから私なんだ。


そのおかげでみんなと繋がったし、
ここまで生きてこられた。


それでいいいのではないかな。








あとは残された時間を
思う存分生き抜くだけです。


みんな...


大好きなみんな...


いっしょに...


「ハッピークリスマス♪」