5回の痙攣 | 続・阿蘇の国のアリス
アリスの表情が変わりました。

雲がでて急に日が暮れたように、
顔色が暗くなったのです。

「なにが起きた」

足のつま先が震えています。

大きな痙攣がつま先から
全身にのぼっていきました。

アリスはぼくを見あげています。

そのとき、ぼくたちふたりの心は
最悪の形でつうじあっていたのだと
思います。

アリスが考えていることは
しっかりとわかりました。

(死へのカウントダウンが
始まってしまった...)

ぼくも全身がしびれて身動きできずにいました。

しばらくのあいだ視線だけで、
うなずきあう時間が流れました。

自分の足に力がはいらなかったけれど、
なんとかアリスの肩に手をおきました。

ぼくの全身が震えていました。

アリスの身体も震えていました。

恐怖に打たれて、
アリスはぼくの顔を見あげます。

あのときの目の深さを、
ぼくは忘れません。

「パパ、私、死んじゃうの」

涙が両目から同時にこぼれました。

静かなリビングでぼくはひざまずき、
アリスの震える身体を抱き締めました。

ぼくたちは声を殺して泣きました。

この身体が熱を失い、息をしなくなる。

アリスがこの世界から消えてしまう。