ごめんね、リリーお姉ちゃん | 続・阿蘇の国のアリス
「かわいそうな女の子...
アリスに罪はないのにね」

耳元で聞き覚えのある声がしました。


「リリーお姉ちゃんの、ママ...?」

しょうこちゃんでした。

しょうこちゃんの優しい瞳が
自分を覗き込んでいました。


私がパパとママの子どもになる以前。

パパとママのもとには、
リリーお姉ちゃんがいました。

近所のひどい飼い主から
パパが譲ってもらっていたのです。


リリーお姉ちゃんは、
ふたりに可愛がられ、
とても幸せに暮らし始めていました。

そんなとき、
私は買われてきました。

(しょうこちゃんの胸に抱かれて、
南阿蘇までやってきました)


パパがリリーお姉ちゃんにも
きょうだいをつくって
あげようとしたのです。

しかし私たちは、
仲良し姉妹にはなれませんでした。


パパのことを愛しすぎた私が、
リリーお姉ちゃんから
パパを奪おうとして、
毎日喧嘩になってしまったのです。


それを見ていたしょうこちゃんは、
たまらずパパに嘆願しました。

「リリーを愛しています。どうか私にください!」


その時、
すでにしょうこちゃんは
保護犬3匹と暮らしていましたが、
リリーお姉ちゃんも
かんたんに受け入れました。


そして最期まで、
リリーお姉ちゃんを全力で愛し続けました。


リリーお姉ちゃんが
安らかな眠りについてすぐ、
しょうこちゃんのおなかのなかに
赤ちゃんがいることがわかりました。

待望の赤ちゃんでした。


しょうこちゃんは今でも、
リリーお姉ちゃんの生まれかわりだと、
つぶやいています。


「天国のリリーお姉ちゃん...
ごめんなさい。
私が追い出してしまって」

「リリーはアリスちゃんのこと、
とっくに許してるわ。
だって、あなたのお姉さんなんだもの」


私はもう一度、
あの時のように、
しょうこちゃんの胸に抱かれようと、
高く、高く、空に向かって
手を伸ばしました。